ドイツ戦車に対して優れた攻撃力を発揮し、兵士たちからは“野獣ハンター”の異名で親しまれたSU-152自走砲の後継として、ソ連は1942年後半にISU-152の開発をスタートさせました。
今回はANZのコミュニティコントリビュータFlying_EliteとZiggy_Bravo_27がISU-152の開発にまつわる歴史を調べて記事にまとめてくれました! それでは一緒にISU-152の歴史について見ていきましょう。
ISU-152の開発史
人類史上最大の軍事作戦といわれるバルバロッサ作戦で、ソ連は1700の都市と7万の村が破壊されるという甚大な被害を受けました。この経験から、当時のソ連軍は市街地に侵攻してきた敵を長距離から排除できる強力な兵器が必要だと悟ります。そこで開発されたのがISU-152です。
この奇襲作戦でソ連軍の旧式武装が壊滅状態になっていたことに加え、近代化による生産効率改善によって最新鋭の兵器を大量に生産可能になっていたことが後押しとなり、戦車の近代化を一気に推し進めます。1943年5月23日、SU-152をベースにした改良案が提出され、SU-152の後継としてISU-152の開発がスタートします。このISU-152にはKV-1のシャーシーが流用されました。
元々はIS-152プロジェクトとして1943年9月から1943年11月まで開発が続けられましたが、開発の過程で致命的な欠陥が複数見つかったことから、計画をさらに改修する必要がありました。そこで同年11月6日、ISU-152としてプロジェクトを再スタートし、1943年12月に生産を開始しました。
ISU-152Kについて
1950年代後半になると、ソ連は近代改修型の戦車の部品を流用した戦闘車輌の製造を開始します。その中で生まれたのがISU-152の派生型のISU-152Kです。
ISU-152Kには次の車輌の部品が用いられました。
- T-54のエンジン
- T-10の駆動装置
当初はObject 241Kとして開発がスタートしたISU-152Kには、さまざまな改良がくわえられました。搭乗員戦闘室から内部燃料タンクのひとつを無くしたことで、搭載可能な砲弾数が増加しました。また車長用キューポラが搭載され、燃料タンクにも改良が加えられました。その他の大きな特色としては、60ミリ厚の防盾装甲板を15ミリの装甲板で補強しているところです。Kモデルの中には、同じように防盾前面部の装甲板が補強された車輌がいくつか存在します。
BL-10砲について
第2次世界大戦末期、BL-10砲は1キロメートルからの射撃で205 mm装甲をも貫く火力を備えた強力な砲としてBL-8をベースに開発されました。当初はISU-152-2に搭載する目的で開発が進められていましたが、砲身のバランスや安定性も思わしくなく、開発が難航していました。さらにテスト段階で戦争が終結したこともあり、BL-10砲の開発は中止を余儀なくされました。
ISU-152の役割
第二次世界大戦中、ISU-152は第2戦線で、主にIS戦車の後方で支援車輌として活躍しました。ただその強力な主砲の威力を活かして、自走砲として運用されることもありました。
ベルリンの戦いで、ISU-152は重突撃砲としてパリに配置されました。パンツァーファウストからの攻撃による被害を最小限にとどめるため、狙撃兵や、機関銃、火炎放射器で武装した歩兵隊に囲まれながらの運用でした。
ドイツ軍による対戦車砲にも耐えられるISUの役割は、敵の重防御拠点を破壊することでした。HE弾はドイツ軍の頑丈な重戦車でさえも撃破もしくは行動不能にできる威力を備えており、Tiger IやTiger II、 また稀ではありますがJagdtigerやFerdinand/Elephantでさえもその敵ではありませんでした。
実戦におけるISU-152
第二次世界大戦後もISU-152は現役として1970年代までソ連軍で運用され、ポーランド、チェコスロバキア、ユーゴスラビア、ルーマニア、中国、北朝鮮、エジプト、イラク、フィンランドなどの世界の国々で紛争を治めるために、そして自由を守るために運用されました。
さらに1986年にチェルノブイリ原発事故が起きると、事態の収束と沈静化のためにISU-152が出動しました。
現在のISU-152
戦車ファンの皆さんなら、この史実車輌を実際に目にしてみたいと思うでしょう。この野獣ハンターは世界各地の博物館で見ることができます。
- ベルギー、リュクサンブール州バストーニュにあるBastogne Barracks
- ポーランド、ワルシャワにある軍事博物館
- ベラルーシ、ミンスクの大祖国戦争史のベラルーシ州立博物館
- ロシア、モスクワの中央軍事博物館
- ロシア、モスクワ郊外のクビンカ戦車博物館
- 中国、北京の北京坦克博物館
- イスラエル、ラルトンのラトルン戦車博物館
- 他にもロシア、ポーランド、ウクライナの博物館で展示されています。
さらに実戦から65年ぶりにISU-152が修復されるドキュメンタリー動画もご覧ください!(※ロシア語音声のみ)