Cavalier:幻の巡航戦車

Cavalier(キャバリエ)は、第二次世界大戦中にイギリス陸軍が製造した巡航戦車です。キャバリエの設計案として提出されたA24案は、のちにCentaurとCromwellといった名戦車の土台になりました。

今回は『World of Tanks』でTier V中戦車として愛されるCavalierの史実を、ANZの公式コミュニティコントリビューターのZiggy_Bravo_27(英語ページ)が調査し、まとめてくれました。それでは一緒にキャバリエの歴史について見ていきましょう。

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キャバリエについて

キャバリエの試作車輌

イギリス軍は戦車を歩兵戦車と巡航戦車のふたつに分類し、それぞれ異なる役割を与えていました。チャーチルのような歩兵戦車は分厚い装甲を活かして歩兵と共に出撃し、敵戦線を突破することが求められました。一方で、巡航戦車は機動力とスピードを活かして敵の戦線の突破や追撃をすることが求められました。

キャバリエは旧式化したクルセーダーの後継車輌として開発がスタートしましたが、実戦で巡航車輌として用いるには出力が足りず、補助車輌もしくは訓練車輌として運用されました。

ナッフィールドの巡航戦車

1940年代中盤、イギリス軍はオードナンス QF 6ポンド砲を搭載できる戦車の設計案をいくつか作成するように要請します。この中にはボクスホール社版のチャーチルともいえるA23 Cruiserがあったほか、クルセーダーの後継として考案された設計案をベースにしたA24 Cruiserがありました。

A24 Cruiserの開発プロジェクトには、ナッフィールド・オーガニゼーションとバーミンガム・レールウェイ・キャリッジ・アンド・ワゴンの2社が名乗りをあげましたが、ナッフィールドが開発契約を勝ち取ると、1940年末に新プロジェクトとして本格的に始動します。

A24 Cruiserの設計案は新型のリバティー・エンジン(410馬力)と70ミリ厚の装甲、それに6ポンド砲を装備することを前提に開発がすすめられました。1941年1月、1942年初頭に新型巡航戦車の大量生産を開始することが決定されます。1年間というタイムリミットの中で、新規に設計案を起こすには時間が足りないことから、既存の設計案をベースにナッフィールドに試作車輌を製造するように要請します。

ナッフィールドは1941年末まで、のちにクロムウェルとして知られるA24プロジェクトの開発に取り組むと、設計案はラストン&ホーンズビーに引き継がれ、本格的に大量生産を開始します。しかし、クルセーダーの改良型に6ポンド砲を搭載する工程が難航し、進捗は予定よりも大幅に遅れました。

試作車輌の試験は1942年3月に始まりましたが、そこでナッフィールド社製の新型リバティー・エンジンに致命的な問題があることが発覚します。エンジンの問題を解決するために、A24 (旧型リバティー・エンジン搭載)、A27L(改良型リバティー・エンジン搭載)、A27M(ミーティア・エンジン搭載)の3つの設計案が考案されます。これら3つの設計案は、当初はすべてクロムウェルとして呼称されていましたが、のちに巡航戦車Mk.VIII キャバリエ(A24)、巡航戦車Mk.VIII セントー(A27L)、巡航戦車Mk.VIII クロムウェル(A27M)として区別されるようになります。

A24キャバリエの設計案

車体のサイズだけを比べると、キャバリエはクルセーダーとほぼ同じです。しかしクルセーダーにはない改良点がいくつも施されています。そのひとつは、車体の装甲です。ボルトの留め具を最小限の使用にとどめるため、鋼鉄板を溶接して繋ぎ合わせています。車体前面の傾斜装甲の最大厚は76mm。車体側面の装甲厚は20 mmです。

足回りは後輪駆動の機動輪(スプロケット)、前輪に誘導輪(アイドラ―)を装備しています。履板リンクはクルセーダーのものとよく似た小さくて細いものが使用されています。側面には装甲板で補強された用具箱が備えられており、これが増加装甲の役目も果たしています。車体後部の排気箇所も装甲でおおわれています。

車体内部は戦闘室、操縦室、エンジン室に分かれており、エンジン室は耐火仕様となっています。またエンジンとトランスミッションの間にも耐火用の隔壁が備えられています。

6ポンド砲用の新型の砲塔は、角ばった6面製のデザインで、搭乗員3名を配置できるほどの広さがあり、50 mm厚の装甲で守られています。今ではクルセーダー戦車のトレードマークとなっています。

6ポンド砲は大幅な改良が加えられ、100 mの距離から85 mm厚装甲を貫通できる能力を備えていました。副装にはベサ機関銃が2丁、副操縦手用に車体にひとつ、そして砲手用にひとつ備えられています。

キャバリエと派生型

キャバリエ

発注数500輌に対して、1942年中盤から大量生産を開始したものの、大幅な遅延により1943年中盤まで納品完了にいたりませんでした。しかしその頃には、すでにより優れた設計案が開発されていたため、キャバリエは巡航戦車として配置されることはありませんでした。

キャバリエのふたつの派生型は第二次世界大戦で運用されています。

  • キャバリエOPは、主砲が模造品に交換され、砲塔内に無線装置を増強し、敵砲兵の位置や攻撃範囲を観測する目的として、砲兵観測車として運用されました。
  • キャバリエARVは、砲塔が撤去され、Aフレームジグと牽引装備が搭載され、回収戦車として運用されました。

 

キャバリエの運用

ボービントン戦車博物館に展示中のキャバリエ

エンジンの信頼性の問題から、キャバリエを巡航戦車として運用する案は幻に終わり、同戦車は主に訓練用車輌や補助車輌として運用されました。そのうちの多くは、OP(観測車輌)やARV(回収戦車)に改造され、実戦で運用されました。

1945年までに、少なくとも12輌がフランス軍の第2竜騎兵連隊に渡っていることがわかっています。イギリス以外の国でキャバリエが運用された記録は、これのみにとどまっています。

開発を急ぎすぎたこともあり、ナッフィールドのリバティー・エンジンには深刻な問題があり、キャバリエとその派生型は、第二次世界大戦中は主にイギリス軍の教育課程で訓練車輌として運用されました。

歴史上の実戦では大きな活躍はしなかったキャバリエですが、ぜひ『World of Tanks』の戦闘で戦場を駆け巡らせてあげてください。

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