自走砲は長らく、このコミュニティの不満の種でした。劣悪な射撃精度と長大な装填時間を有する自走砲は、使う側にとっては快適とは言えず、撃たれる側にとっては、突然の不意打ちによりたった 1 発でガレージ送りにされることが少なからずありました。このような自走砲は、それでもなおこのゲームの一部であり続けて来たのです。そして、このような問題点を改め、自走砲をチームにとって適切な存在へと生まれ変わらせるためには、全面的な刷新を必要としました。アップデート 9.18 で、その刷新を実装します。
このアップデートは、自走砲の戦闘パラメータおよびメカニズムの両面に様々な変更が加えられます。これらの変更は全て、自走砲にチームプレイの中での適切な役割を与え、それを使う側にとってエキサイティングでやり甲斐のあるものとし、さらには、撃たれる側にとってのフラストレーションを軽減することをも狙ったものです。従来の自走砲は、絶大な火力を誇るゆえに、キャンプ行為 (安全な場所に籠って積極的に進撃しない) を誘発し、引き分けを招きがちでした。刷新後の自走砲は、チームと密接に連携して行動すべき存在となり、遠方から標的を弱体化させて攻勢を支援します。自走砲弾の直撃を受けた際に受けるダメージが大幅に低くなり、たった 1 発でガレージ送りになるケースはほとんど発生しなくなりました。よって、重戦車は従来ほどには自走砲を恐れる必要がなくなり、積極的に進撃して攻勢を先導することができるようになりました。全ての車輌クラスにとって、よりアクションに満ちた、流動性が高く楽しい体験が実現できるはずです。
公開テストの告知 においては、自走砲を長距離火力支援車輌へと生まれ変わらせるための、様々な変更点の概要をご紹介しました。今回は、それらをさらに詳しく紹介すると共に、自走砲のエコノミーおよびパーソナルミッションについてもご紹介します。
自走砲の台数制限
9.18 からは、各チームの自走砲が最大でも 3 両までに制限されると共に、自走砲は小隊に参加できなくなります。自走砲の台数制限に伴い、自走砲が支配的となるような試合はなくなりますが、チームを効果的に支援するには充分な数と言えるでしょう。敵を必要以上に恐れさせてキャンプ行為を招くケースも少なくなるはずです。
自走砲が小隊に参加できなくなったことで、自走砲はチーム全体との連携を意識しながら戦う必要がありますし、マッチメイカーにとっては、バランスの取れたマッチを組む上で助けとなります。従来であれば、自走砲 3 両編成の小隊がチームのトップ、というシナリオが発生していました。そして、支援車輌であるはずの自走砲がチームの主力というのは、好ましいこととは言えませんでした。また別の好ましくないケースとしては、小隊に所属する自走砲が、自分の小隊のメンバーばかりを支援し、他の味方への支援を全く怠る、というケースも発生していました。これらの問題を解決するため、自走砲はダイナミック小隊および通常小隊のどちらにも参加できないようにしました。
射撃パラメータの見直し
大口径の主砲で高貫通の徹甲弾 (AP) および対戦車榴弾 (HEAT) を撃ち出すとき、自走砲は分厚い装甲をも撃ち抜き、致命打を与え得る恐るべき存在となりました。そしてそのような自走砲の存在が、キャンプ行為および引き分けの誘因になっていました。自走砲による一撃死を恐れるあまり、安全な場所から動こうとしないのです。誰も積極的に戦おうとしないような試合に加わりたいと思う人は居ないでしょう。
そして同時に、劣悪な射撃精度、長い装填時間、大きな照準拡散を有する自走砲にとって、クリーンヒットはあまり期待できませんでした。敵の予想進路を狙って敵の出現を待ち、移動中の標的を狙って射撃しても、大半はミスショットに終わっていました。そしてその後また、次の射撃機会まで長く待つ必要があったのです。このようなことが繰り返されれば、自走砲を二度と使いたくない、と思う人は多いでしょう。
自走砲のパラメータを見直すにあたっては、これら両方の問題に対処することを狙いました:
- 自走砲による一撃死や大打撃の確率を下げるため、自走砲の榴弾 (HE) の貫通力および単発ダメージを大幅に引き下げ、徹甲弾 (AP)、硬芯徹甲弾 (APCR) および対戦車榴弾 (HEAT) を廃止しました。もちろん、弾薬庫誘爆を招いた場合には一撃死もあり得ますが、今ではその確率はゼロに近くなっています。
- 自走砲の砲の取り回しを改善するため、移動に伴う照準拡散を抑制し、装填時間を短縮すると共に、照準速度と射撃精度を高めました。これに伴い、自走砲はもはや運任せの存在ではなくなっています。次弾射撃までの時間が大幅に短縮され、砲弾がずっと狙い通りに着弾するようになり、そしてそれが直撃だったとしても至近弾だったとしても、爆発範囲内にいた不運な標的を全てまとめてスタンすることができるのですから。つまり、味方を効果的に支援できる可能性が増えたと言えるでしょう。
スタン・メカニズム
全く新たなメカニズムである「スタン」は、自走砲を効果的なチームプレイヤーへと生まれ変わらせる上で重要な要素です。9.18 からは、自走砲弾 (口径 122 mm 以上の HE 弾が前提) の爆発範囲内に居た全ての車輌の能力が一時的に低下するようになりました。このスタン効果によって、自走砲は攻勢を遠方から支援し、戦いの流れを変え得る存在となっています。自走砲のスタン効果によって、チームが敵の防衛を突破できる隙が生み出され、敵の不意を突くことができるのです。一方で、撃たれる側にとっては、かつてのような一撃死のリスクはほぼなくなりました。スタン効果とは、車輌が砲弾の爆発に巻き込まれた際、その搭乗員がスタン (麻痺) 状態となる効果であり、それに伴い車輌の機動性、射撃精度、装填時間が短時間低下します。これは、スタン時間が終わった後は元通りとなります。
スタン時間
HE 弾の特性値を確認すると、最大・最小スタン時間というパラメータが新たに設けられています。実際のスタン時間は、2 つの数値の合計値として計算されます。1 つは固定値、もう 1 つは変数であり、その合計は最小でも 5 秒間です。1 つ目の数値は最小スタン時間 (固定値) であり、自車輌が爆発範囲内に居た場合には、少なくともこの時間だけスタンされることになります。2 つ目の数値は、着弾地点からの距離、爆風損傷による被ダメージ量、搭載中の拡張パーツと消耗品に応じて変動し、その最大値は、最大スタン時間から最小スタン時間を引いた値となります。
車輌の装甲には、爆風損傷による被ダメージを軽減する効果がありますので、スタン時間を短縮する効果もあります。加えて、内張り装甲および救急キット (大) を搭載することでも、スタン時間を短縮することが可能です:
- 内張り装甲 (全タイプ) には、スタン時間を 10% 短縮する効果があります。ただし、これに爆風損傷による被ダメージ量の軽減に伴うスタン時間短縮も加わりますので、内張り装甲 (特大) こそが最も大きなスタン時間軽減効果を有するということになります。
- 救急キット (大) には、スタン時間を 5% 軽減する効果があり、救急キット (大・小ともに) には、使用した際にスタン効果を解消する効果があります。
同じ車輌が複数の HE 弾によってスタンされた場合、スタン時間は砲弾毎に個別に計算されます。カウントダウンは最初の被弾の際に開始されます。そして 2 つ以上のスタン効果がオーバーラップした場合、一方は他方によって部分的または完全に打ち消されます。
例: Type 5 Heavy が Object 261 の砲弾を被弾し、9 秒間スタンされたとします。その 3 秒後にG.W. Panther によって 6 秒間のスタンを受け、さらにその 1 秒後に Conqueror Gun Carriage によって 12 秒間スタンされたとします。単純な合計では、この Type 5 Heavy のスタン時間は 27 秒間になりますが、実際のスタン時間は 16 秒間でした。これは何故でしょうか? G.W. Panther から 6 秒間のスタンを受けた時点で、残りスタン時間は 6 秒間でした。このように、残りスタン時間と G.W. Panther による新たなスタン時間は完全にオーバーラップしていため、スタン終了が遅くなることはありませんでした。Conqueror Gun Carriage からスタンされたのは、Object 261 からスタンされた 4 秒後のことであり、その時点での残りスタン時間は 5 秒間でした。よって、Conqueror Gun Carriage による 12 秒間から 5 秒間が差し引かれ、Object 261 によってスタンされた時点からの合計スタン時間は、9 + (12 - 5) = 16 秒間という結果になったのです。
スタン効果
車輌が HE 弾による爆風を受けた際、そのショックから搭乗員がスタン (麻痺) 状態となり、車輌の能力が低下します。これがスタン効果であり、その効果の大きさは、効果時間の場合と同様、2 つの数値で構成されます。1 つ目の数値は固定値であり、これは各パラメータの最大悪化量の 75% です。2 つ目の数値は、受けたダメージ量に直接依存して変動し、その最大値は、各パラメータの最大悪化量の 25% です。複数の砲弾によって同時にスタンされた場合は、パラメータ悪化量がより大きい方の効果のみが適用されます。 以下は、各パラメータの最大悪化量の一覧です:
- エンジン出力低下: 30%、最大速度低下: 25%
- 車体旋回速度低下: 20%、砲塔旋回速度低下: 40%
- 視認範囲低下: 25%
- 移動、車体旋回、砲塔旋回に伴う照準拡散の増大: 50%
- 装填時間および照準時間の増大: 50%
- 射撃精度低下: 25%
複数回使用可能な消耗品
9.18 からは、修理キット、消火器、自動消火装置、救急キットを 1 戦中に複数回使用できるようになり、これによって戦闘を最後までしっかりと楽しめるようになります。例えば、弾薬庫に損害を受けて修理キットを使用し、さらに運が悪いことに、その後主砲に損害を受けてしまったとします。これまでは、修理キットを使用した後に受けた損害に関しては、その戦闘が終わるまで直すことができませんでした。しかし 9.18 からは、修理キットのクールダウン時間である 90 秒間が過ぎれば再び使用できるようになりますので、その後に修理し、能力を回復した上で戦闘を継続することが可能です。 消耗品を 1 戦中に複数回使用したとしても、支出が青天井になることはありません。使用回数を問わず、1 戦で消費される費用は各 1 個分となります。つまり、1 戦中に修理キットを 1 回のみ使った場合でも 10 回使った場合でも、1 戦での費用は 3,000 クレジットなのです。既に述べたとおり、使用後、再度使用可能になるまでは 90 秒を要しますので、その点にはご留意ください。
スタンによるアシストダメージ
自走砲の新たな役割を固め、自走砲の新たな役割に対し褒賞を与えるため、自走砲のエコノミーに関してもやや見直しました。すなわち、自走砲がスタンした敵車輌に対して味方がダメージを与えた場合、自走砲に EXP およびクレジットが付与されるようにしました。戦闘結果画面およびプロフィール画面 (実績セクション) では、自車輌のアシストによるダメージとして掲載されています。
ダメージアシストの合計は、基本的には自車輌がスタンした車輌に対して味方が与えた全ダメージの合計ですが、ある敵車輌に味方がダメージを与えた時点で、その敵車輌を複数の自走砲がスタン中だった場合 (スタン時間が重複していた場合)、ダメージアシストはその敵車輌をスタン中だった全ての自走砲に分配されます。その際、最初にその敵車輌をスタンした自走砲に 70% が付与され、残る 30% は、その敵車輌をスタン中だった他の全ての自走砲に公平に分配されます。
例えば、味方自走砲が既にスタン中だった敵車輌を、他の 2 両の味方自走砲が次々にスタンしたとします。この場合、最初にその敵車輌をスタンした自走砲によるスタン時間が終了するまでの間は、他の 2 両にダメージアシストのうちの 30% が公平に分配されます。そして、最初にその敵車輌をスタンした自走砲によるスタン時間が終了した後には、2 番目にその敵車輌をスタンした自走砲に対してダメージアシストの 70% が付与されるようになります。
もちろん、1 両の自走砲のみによってスタン中だった敵車輌に味方がダメージを与えた場合には、ダメージアシストは 100% その自走砲に付与されます。
なお、自走砲が敵車輌をスタンした際に自走砲自身が与えたダメージは、ダメージアシストには含まれません。
例: 前述の、スタン時間の重複の例に戻りましょう。その例には、Type 5 Heavy、Object 261、G.W. Panther および Conqueror Gun Carriage が登場しました。Type 5 Heavy を最初にスタンしたのは Object 261 であり、その 3 秒後に G.W. Panther がスタンするまでは、Object 261 にダメージアシストの 100% が付与されます。そして G.W. Panther がスタンしてから Conqueror Gun Carriage がスタンするまでの 1 秒間には、ダメージアシストの 70% が Object 261 に、30% が G.W. Panther に付与されます。Conqueror Gun Carriage がスタンした後、Object 261 および G.W. Panther によるスタン時間が終了するまでの 5 秒間には、ダメージアシストの 70% が引き続き Object 261 に付与され、G.W. Panther と Conqueror Gun Carriage には各 15% が付与されます。そして、残る 7 秒間は、スタン時間が残っているのは Conqueror Gun Carriage のみになりますので、ダメージアシストの 100% が Conqueror Gun Carriage に付与されます。
チームとの連携
自走砲がチームの勝利に貢献するためには、他のチームメイト達と連携を図る必要があります。そこで、連携を図りやすくするためにいくつかの追加 UI 要素を実装しました:
- 味方車輌のためのターゲットエリア表示: 自走砲がどこを狙っているのかを味方車輌に伝達し、味方に攻撃を集中すべきエリアを把握させることができるようになりました。現在のターゲットエリアを伝達する方法は、単に「護射撃を要請/攻撃中」のキー (標準では「T」キー) を押すだけです。表示される半径は、最大 15 m です。
- スタン・インジケータ: 自走砲でプレイしている際には、スタンした車輌に対して他の味方が与えたダメージ (自車輌のアシストによるダメージに含まれます) を、戦闘中および戦闘結果において確認できます。戦闘中には、スタン中の車輌の上部にはスタン残り時間が表示されますが、この表示は、全てのプレイヤーが確認可能です。また、自車輌がスタンされた場合には、失った HP に加え、悪化した戦闘パラメータが HUD の左下に表示されます。
- 追加の照準モード: 人気 MOD として知られる “Battle Assistant” を参考とした新たな照準モードを実装しました。この新モードでは、自走砲弾の着弾経路や地形の状況が明確に分かり、目標が狙いやすくなります。これは着弾点付近に大きな障害物が存在する場合に有用であり、市街地や起伏の多い地形においては特に重宝することでしょう。通常の照準モードとこの新たな照準モードを切り替えながら戦うことで、より的確な砲撃が実現できるはずです。
ゲームプレイ
自走砲でプレイしていない場合であっても、ミニマップには注意を払ってください。味方自走砲がターゲットエリアを伝えてきた場合には、敵をそのエリアに追い込むことを狙い、自走砲がより多くの敵車輌をまとめてスタンできるように支援しましょう。加えて、味方自走砲の攻撃に巻き込まれないように注意する必要もあります。
パーソナルミッション
自走砲の総合的な見直しに併せて、自走砲用のパーソナルミッションを改定しました。下記のリストを確認し、ミッションに取り組んで褒賞を獲得しましょう!
今回の自走砲の総合的な見直しは大改修であり、その開発作業にはかなりの期間を要しました。自走砲に手直しを加えるのは今回が初めてではありませんでしたし、今回はまずは小さく始めました。すなわち、内部的なディスカッションとテストを何回か重ねて、それが適切なアプローチかどうかを確認しました。その後サンドボックスに、スタン・メカニズムを代表とする一連の変更点を実装した結果、多くの皆様にテストにご参加頂き、ファインチューンを図ることができました。このテストによって、自走砲の見直しにより、チームワークが促進され、試合がより流動的かつ公平になることが確認できましたので、公開テストへと移行しました。しかし開発作業はまだまだ終わりではないのです。開発チームでは、正式リリースに向けてさらにこれを磨き上げていきますし、正式リリース後もそれは同様です。そのために開発チームでは、皆様による支援を必要としています。ぜひ公開テストに参加し、自分自身で新しい自走砲がどうなったかを試し、ご意見をフォーラムで共有して頂ければ幸いです。