週刊ヴィクトリヤ日記 Vol.32『砲弾と貫通のメカニズム 後編』

より詳細な貫通メカニズムを見ていきましょう

連載第32回となる今回は、前回のVol.31『砲弾と貫通のメカニズム 前編』に引き続き、ゲームシステムの中から砲弾と貫通のメカニズムについてご紹介していきたいと思います。

後編となる今回は砲弾の跳弾や標準化というゲームシステム上の少し複雑な要素について解説していきたいと思います。


より砲弾の効力を活かすために。『砲弾の標準化』とは?

敵戦車との撃ち合いを行う際は相手戦車の最も装甲が薄い箇所(例えば車体前面しか攻撃できない場合は、比較的装甲が薄めな下部装甲やハッチやペリスコープ部など)を狙うことがセオリーとなりますが、実際の戦闘中には相手も絶えず動いていることもあり、そうそう落ち着いて弱点箇所を正確に狙うことは難しいです。とりあえず敵戦車の撃てそうな箇所を狙って撃つ!といった場合もあるかもしれませんが、そんな時でもゲームシステムをしっかり覚えていればより正確に貫通が可能な箇所に攻撃することができます。
まずは砲弾の特性の一つである『砲弾の標準化』について見ていきましょう。

敵戦車の装甲に対しては、なるべく砲弾の入射角を垂直にするよう攻撃をすることがポイントであると前回お話しましたが、『World of Tanks』のゲームシステム上の効果として、装甲に直撃した砲弾は若干入射角度が垂直に近づく様に補正されます。その結果、通常の計算式で算出された貫通可能な装甲厚に対して、実際の貫通できる装甲厚が若干増します。
この効果は『砲弾の標準化』と呼ばれ、それぞれの砲弾によってその補正される角度は異なります。徹甲弾(AP)の標準化の角度は5度、硬芯徹甲弾(APCR)では2度、対戦車榴弾(HEAT)や榴弾(HE)は標準化の対象にはなりません。

実例で簡単に見ていきましょう。厚さ38mmの側面装甲を持つ敵戦車に対して、75mmの装甲貫通力を持つ徹甲弾で入射角60度の位置から攻撃を行います。
この場合、38mmの装甲板でも、こちらの砲弾入射角が60度と浅くなるため、見かけ上の装甲厚は76mmとなり砲弾が持つ貫通力を1mm上回ることとなるため理論上は貫通できません。

しかし徹甲弾は直撃時に入射角が5度垂直になるように標準化されるため、実際は60度の角度で直撃した砲弾も55度の入射角で直撃したことに補正されます。
38mmの装甲板に対して55度の角度で砲弾が直撃した場合の見かけ上の装甲厚は66.3mmとなるので、装甲貫通力75mmの徹甲弾でも貫通可能となります。
ただし、砲弾の貫通力はガレージで確認できる平均貫通力の値から±25%で変動するため毎回同じように貫通できる訳ではありません。この点だけ注意しておきましょう。

『砲弾の標準化』について簡単にまとめると、『徹甲弾(AP)や硬芯徹甲弾(APCR)で敵戦車を撃った場合、2-5度の範囲で砲弾の入射角が垂直に近くなるように補正され、若干敵戦車の見かけ上の装甲厚が薄く判定され貫通しやすくなる。』といった感じです。

標準化効果がさらにアップ!『口径の2倍ルール』とは?

標準化について説明する上でもう一つ重用な要素として、『口径の2倍ルール』というものが存在します。ここで言う口径とは、自分の戦車の砲弾の口径を指します。
このルールは『砲弾の口径が、砲弾が命中した場所の仕様上の装甲厚の2倍以上の場合、標準化の効果が増加する』というものです。実際の計算式は徹甲弾の場合、「5(APの標準化角度)× 1.4 × 自身の砲弾口径(mm)/ 敵戦車の装甲厚(mm)」となります。

かなり複雑な話になってきたので、実際の例になぞって説明していきましょう。先程と同じく側面38mm厚の装甲に対して、今度は10.5cm砲の徹甲弾(AP)で同じく入射角60度の位置から攻撃します。側面装甲の38mmの厚さに対して、10.5cm(105mm)の口径があるため『口径の2倍ルール』が適用され、標準化の効果が増加します。

通常、徹甲弾(AP)の場合は5度の標準化補正がありますが、このルールが適応できる場合は「5(APの標準化角度)×1.4×自身の砲弾口径(105mm)/ 敵戦車の装甲厚(38mm)=19.34」の計算式により標準化の補正角度が5度から約19.34度まで増加します。
その結果、実際は60度の入射角で砲弾が直撃しているにもかかわらず、システム上は大幅に補正が入り40.66度(60-19.34))の入射角で当たったと計算されるため、相対的な敵戦車の装甲厚は本来76mmと判定されるところが50.09mmになります。

これをかなりざっくりまとめると、『相手の装甲厚の2倍以上の口径を持つ大口径砲で徹甲弾や硬芯徹甲弾を撃った場合、砲弾の標準化の効果が増加しさらに装甲を貫通しやすくなる』ということです。なお、そもそも標準化の効果が発生しない対戦車榴弾(HEAT)や榴弾(HE)にはこのルールは適用されません。

砲弾の入射角度には要注意!跳弾って?

先程の標準化の効果が適用されたとしても貫通出来ずに敵戦車に砲弾が弾かれてしまう場合があります。徹甲弾(AP)、硬芯徹甲弾(APCR)、対戦車榴弾(HEAT)には『跳弾』という判定が存在し、どんなに貫通力を持っていたとしても以下の場合では砲弾が弾かれて跳弾してしまいます。

徹甲弾(AP)、硬芯徹甲弾(APCR)の場合は入射角が70度以上の場合は跳弾し、跳弾した砲弾は運動エネルギーを失うため貫通力が25%低下します。一方対戦車榴弾(HEAT)の場合は85度以上で跳弾判定となるため、徹甲弾に比べるとやや跳弾しにくい、と言えます。また対戦車榴弾は跳弾しても貫通力は低下しません。榴弾には跳弾効果は発生しません。

跳弾を説明する上でもう一つ重用なのが、徹甲弾(AP)と硬芯徹甲弾(APCR)のみに適用される『口径の3倍ルール』というものです。このルールは『砲弾の口径が、砲弾が命中した場所の仕様上の装甲厚の3倍以上の場合、跳弾しない。』と言うものです。
通常は強制的に跳弾判定が発生する70度以上の入射角で命中したとしても、命中部分の仕様上の装甲厚に対して砲弾の口径が3倍以上あれば貫通することができます。

豆知識ですが、跳弾した砲弾は1度まで貫通判定が発生します。敵戦車に弾かれた砲弾が隣にいた別の敵戦車に当ってそちらを撃破…!なんてことも…!?

空間装甲の貫通判定について

前回の『砲弾と貫通のメカニズム 前編』でも簡単に触れましたが、高Tier帯の戦車の中には空間装甲(スペースドアーマー)と呼ばれる装甲を搭載した車輌が登場します。空間装甲は簡単に説明すると『本装甲の外側に空間を開けて薄い装甲板を配置した装甲』です。

空間装甲に徹甲弾(AP)と硬芯徹甲弾(APCR)が命中した場合、まずは『外側の薄い装甲』に対して貫通判定の計算が行われます。また装甲の厚さに応じて跳弾するのか『口径3倍ルール』が適用されるのかも検証されます。

計算の結果充分な貫通力がある場合は、まず『外側の薄い装甲』を砲弾が貫通します。しかしこの時貫通に利用した分の運動エネルギーは失われるため、装甲の厚さに応じて貫通力が減衰します。そしてその後、『本装甲』に砲弾が届いた際に再度同様の計算が行われ、それでも砲弾に充分な貫通力がある場合は『本装甲』を撃ち抜いてようやくダメージを与えることが出来ます。

対戦車榴弾の場合は少し特殊です。対戦車榴弾は『口径3倍のルール』が適用されず標準化もされません。相手の装甲に対して跳弾せず起爆した場合は、砲弾の入射角と同じ角度でメタルジェットが装甲を貫通します。ただしこのメタルジェットは飛距離の10cmごとに貫通力が5%失われていきます。空間装甲はこの対戦車榴弾の貫通力減衰を狙って2枚の装甲板の間を意図的に離して空間を作っているので、この空間が広ければ広いほど対戦車榴弾から発生したメタルジェットの貫通力は大幅に低下していきます。空間装甲の部分に対戦車榴弾(HEAT)を命中させてもダメージがほとんど入らなかったりするのはそのためです。

ゲームシステム的には『履帯』に対戦車榴弾が命中した場合も、履帯が一次装甲の役割を果たして擬似的な空間装甲として機能するため、同様の効果が発生します。対戦車榴弾で攻撃する場合は履帯部分はなるべく狙わないよう注意しましょう。

まとめ

今回は前後編でかなり複雑な砲弾の貫通メカニズムについてお話しましたが、覚えておくべきポイントだけ簡単にまとめてみました。普通にプレイする上では全てのゲームシステムについて熟知する必要はありませんが、下記のポイントだけ頭の片隅に留めておいてくださいね。

  • 砲弾の貫通判定:相手の装甲厚を砲弾が持つ貫通力が上回れば貫通する。ガレージ上で確認できる数値は100mの距離で装甲対して垂直に撃った場合の平均貫通力。なお実際の貫通力は平均貫通力の数値から±25%の範囲で変動する。
  • 砲弾の標準化:砲弾の命中時、砲弾の入射角度が装甲に対して垂直になるように徹甲弾であれば5度、硬芯徹甲弾は2度補正される。対戦車榴弾と榴弾は標準化の対象にならない。
  • 口径の2倍ルール:砲弾の口径が命中箇所の装甲厚の2倍以上ある場合、標準化される角度が大きくなる。
  • 跳弾判定:砲弾の入射角度が大きすぎると貫通力にかかわらず砲弾が跳弾してしまう。徹甲弾・硬芯徹甲弾は70度以上、対戦車榴弾の場合は85度以上の入射角の場合は跳弾する。なお跳弾した砲弾にも1度だけ貫通判定が発生する。榴弾には跳弾判定はない。
  • 口径の3倍ルール:砲弾の口径が命中箇所の装甲厚の3倍以上ある場合、70度以上の入射角度で命中しても徹甲弾と硬芯徹甲弾は跳弾せず貫通する。
  • 空間装甲の貫通判定:空間装甲とは2枚の装甲板の間に空間を設け二重になっている装甲のこと。それぞれの装甲貫通時に貫通計算が発生する。対戦車榴弾の場合は本装甲に届く前に貫通力が大幅に減衰してしまいダメージを与えられない場合があるので要注意。履帯も擬似的な空間装甲として機能する。

今回は『World of Tanks』のゲームシステムから、砲弾と貫通のメカニズムの解説後編として、かなり複雑な砲弾の貫通メカニズムや標準化、跳弾の仕組みなどを説明させていただきました。これらの計算式は暗記しなくてもゲームシステムが瞬時に計算してくれるので、覚える必要は全くありません。ただこの様なシステムがある、ということを頭に入れておくだけでも少し攻撃を行うポイントなどが変わってくるんじゃないかと思います。

前回でも少し触れたように、『World of Tanks』は1発1発の攻撃の間隔が比較的長いゲームです。たった1発の砲弾でも、それが勝敗を左右することも。どういったタイミングでどこを攻撃するのが最も効果的なのか考えながら、確実に敵戦車にダメージを与えていきましょう!

それでは次回もお楽しみに!良い週末をお過ごしください♪

(コラム記事: ヴィクトリヤ 挿絵イラスト: しばふ)


4コマヴィクトリヤ日記 第32話

「ヴィクトリヤ日記」は毎週金曜日に公開予定です。 次回もお楽しみに!(漫画: kirusu)

 


登場キャラクター

ヴィクトリヤ

Wargaming.net Communityチーム所属の新人社員。ベラルーシ出身。しばしば先輩たちに振り回されている。

ラビ様

ヴィクトリヤが入社したWargaming.net のとあるオフィスの社長(代理)。 見た目は完全にお子ちゃまだが偉い人。

ミズキ

ヴィクトリヤの先輩社員。Community チーム所属。ヴィクトリヤのことは勝手につけた愛称の「ヴィッキー」と呼んで可愛がっている。

クルイロ

Wargaming.net の社員。Quality Assurance チーム所属。 ロシア出身。オフィスの奥にある部屋で黙々とテストプレイをしている。

ツノダ

Wargaming.net の社員。Community チーム所属。 オフィス内のでっかい代表。色々でっかい。重戦車が大好き。


 

4コマヴィクトリヤ日記 作者プロフィール

kirusu

簡単に爆死するへっぽこ駆逐戦車愛好漫画描き。
Web:  http://kirusu.com 
Twitter:  https://twitter.com/kirusu

  • ヴィクトリヤ キャラクターデザイン & 挿絵 : しばふ

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