My Favorite Tanks 第01回 IS-3 / しばふ

IS-3 / しばふ

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今人気のイラストレーター、漫画家の方に、World of Tanksに登場する車輌の中からお気に入りの一輌を選んで描いていただき、素敵なイラストと車輌解説でご紹介をする連載イラストコラム企画の第二弾 「My Favorite Tanks」 がスタートしました!

記念すべき連載第01回は、ミリタリー描写に深い造詣を持ち、今人気急上昇中のイラストレーター しばふ先生に、World of Tanks ゲーム内でも愛用いただいているソ連ツリーのTier VIII重戦車「IS-3」を描いていただきました。

実際は採用されることはなかったものの、ゲーム内では再現することが出来る強力な「BL-9 122mm戦車砲」を搭載した「IS-3」の、迫力ありつつも、どこかのどかな雰囲気を感じるイラストをお楽しみ下さい!

 


IS-3 重戦車

しばふ先生のコメント

皆様こんにちは、しばふです。

もともと私はT-34に乗りたくてソ連ツリーの中戦車ルートを進んでいたのですが、戦場で重戦車の圧倒的な存在感を見るうちに憧れて、KV-13を経由して重戦車ルートに入りました。

なかでもIS-3はその特徴的な車体形状でガンガン敵弾をはじき、高い機動性で敵の側面を突け、極めつけはそれまでに比べて格段に威力と貫通力が増した砲である「BL-9」で敵戦車に122mm砲弾をぶち込める!と、まさに私の思い描いていた重戦車そのもので、今では最も出撃回数が多い戦車です。

実際には「BL-9」がIS-3に搭載されることはなかったようですが、WoTでは「BL-9」に至るまで長らく貫通力不足に悩まされていたため、この砲が開発できた時は感動もひとしおでした。

イラストはそんなIS-3と因縁浅からぬネコ科の邂逅です。

 


車両の解説

ティーガーI重戦車は、ドイツ戦車に対するソ連戦車の質的な優位を粉砕した。1941年6月にドイツ軍の鼻っ柱をへし折ったT-34中戦車やKV-1重戦車は、一年余りをかけたドイツ軍の臥薪嘗胆の前に、非力な存在となったのだ。

以降、ソ連軍はティーガー重戦車に対抗できる重戦車開発に血道を開けた。そしてKVシリーズから発展したIS-2の開発成功に成功したのは1944年になってからのことであった。それまでは相次ぐ損害をT-34中戦車および従来車の派生型車両の大量生産で埋め合わせなければならなかったのである。この反省から、IS-2の量産が軌道に乗るとすぐに、同重戦車の生みの親であるチェリャビンスク・キーロフスキー工場第2特別設計局では、究極の防御力を持つ重戦車の開発に着手した。

ただし、設計局ではIS-2とほぼ同等のテクノロジーしかない条件——つまり同じ重量で、最高の防御力を追求しなければならなかった。結果として、最大220mmの厚さを持つ円錐状の砲塔が印象的な車体となったわけだが、これは単なるペーパープランから生まれたわけではない。設計局では、ソ連国内にゴロゴロあった自軍戦車の残骸を精査し、敵方向別の命中部位リストまで作って命中弾の発生要因を割り出した。そうして、考えうる弱点をすべて潰した、もっとも効率的な装甲配置を施したのがIS-3なのだ。

折しも1944年夏にティーガーII重戦車が登場したこともあり、IS-2と多くの部品を共有しているIS-3の量産計画が加速することになった。それでも1945年5月8日にドイツが降伏した時点では、29輌ほどしか完成車がなく、ついに戦争には間に合わなかった。
IS-3の存在が初めて公になったのは同年9月のベルリンにおける連合国合同記念軍事パレードである。122mm砲を搭載した、このコンパクトな重戦車を見た西側連合軍の陸軍関係者はパニックになり、M-103やコンカラー重戦車の開発に狂奔することになった。冷戦を象徴する戦車開発競争は、このIS-3重戦車が引き金となったのだ。

ただしIS-3は居住性と操作性が悪かった。円錐形の砲塔はただでさえ無駄になる空間が多く、即応弾でさえ内壁のリングに、やや強引に吊るすように据えなければならなかった。装填手は巨大な122mm弾をかなり無理な姿勢で装填しなければならず、相応に発射速度は遅くなった。実際、この弱点は1967年の第三次中東戦争、すなわち「六日間戦争」で露呈した。エジプト軍が装備したIS-3は、イスラエル軍のM-51「Iシャーマン」と砲火を交え、惨敗を喫した。強靱な防御力で、緒戦はイスラエルを圧倒しながらも、発射速度の遅さから簡単に側面を取られて各個撃破されたのだ。

こうした弱点が露呈する前に、後継戦車にバトンタッチできたことは、IS-3にとっては幸運であったはずだ。だからこそ、想定された戦場において、この小型重戦車がいかなる威力を発揮するのか、その真価はぜひWoTの戦場で確かめて欲しい。
少なくともWoTの装填手は、10分間程度なら中腰でのきつい作業で音を上げることはないのだから。

解説文:ウォーゲーミングジャパン ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx

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スクリーンショット

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