机上の設計案で終わった戦車。ゲームや創作物の架空戦車。まことしやかに存在が噂された極秘戦車。この極秘戦車についての噂は大戦時にはつきものでした。冗談や軽口で噂されたこともありましたが、中には戦術として意図的に流布された噂もありました。今回は『World of Tanks』でも人気が高く、インターネット上でも噂が多いドイツの戦車について見ていきたいと思います。
Waffentrager auf E-100
ドイツ戦車らしくないドイツ戦車ですね。この車輌はWargamingによる架空戦車です。計画当初は128mmの2連装砲を搭載する予定でしたが、車体に多連装砲を搭載させる余裕がなかったため、自動装填装置付きのAA砲を搭載しました。しかし他の駆逐戦車と比較して違和感があったため、それもすぐにほかのものに変更となりました。
G.W. Tiger (P)
Wargamingが作ったた2輌目の自走砲です。この車輌もまた架空車輌です。ドイツ技術ツリーに実装されたこのG.W. Tiger (P)は、G.W. TigerやGrille 17/21へと続きます。
E-50 Ausf.M
この車輌もWargamingが開発し、特許も取得しています。ただし完全に架空というわけではありません。The E-50 Ausf.MはE-50中戦車をベースにして、さらに改造を加えた車輌です。車体と砲塔にはいくつかの改造が加えられていますが、基本的にはE-50を土台にしています。当時の設計案を見ると、車体後部に変速機を搭載する予定であったあことがわかります。のちにフランスが中戦車を開発するにあたり、この設計案を参考にAMX M4を開発しました。その際にAMX M4にE-50のエンジンを採用しています。
Jagdpanzer E-100
Waffentrager auf E-100とは違い、この戦車はWargamingが開発したものではありません。元々はSturmgeschuetz E-100と呼ばれていたこの戦車は、信じがたいかもしれませんが、駆逐戦車としてBZ 3364の設計図を参考に設計されました。詳しくはこのページ(英語のみ)で読むことができます。この車輌の正式な設計図は存在しませんが、Kruppが1944年夏に設計していた戦車と同じ系統のように見えます。
Jagdpanther II
この戦車はKruppの技術者たちによって設計されました。1944年11月、「Panzerjäger Panther mit 12,8 cm L/55 (Pak 80)プロジェクト」が進められていました。このプロジェクトは、パンター戦車をベースに、車体後部に戦闘室が備えられた駆逐戦車の開発が目的です。設計上では、強力な128 mm Pak 80砲の実装が可能でした。ただこの設計図の中には車台についての指示はなにも記されていなかったため、ゲーム内の車輌にはPanther IIの車台を使用しています。
VK 72.01 (K)
VK 72.01 (K)もまたKruppが設計しました。VK 72.01 (K)による最初の記述は1942年にさかのぼります。当初の仕様では車体重量72トンとの記載がありましたが、すぐにVK 70.01と同量の90トンにまで増量した、まさに超重戦車です。武装には105 mm or 149 mm砲が選ばれました。1942年の春、Kruppの技術者たちは、車体後部に戦闘室を備えた派生型の開発に取り組み始めました。VK 72.01プロジェクトはわずか数か月の間に仕様の変更を繰り返しましたが、計画案のまま終わりました。
E-90 (Pz.Kpfw.Tiger III S)
この戦車は2000年に入ってから、インターネット上の歴史ファンが想像を膨らませて生まれた架空の戦車です。創作者によると、このPz.Kpfw.E-90(Tiger III S)はE-100を軽量化した車輌とのことです。戦車大国ドイツには史実車輌を含めて、とても多くの優秀な重戦車が存在しています。『World of Tanks』のプレイヤーを含めて、ネット上の戦車ファンは、今でもドイツ戦車への想像を大きく膨らませています。戦車愛ですね。
E-79 Schwartzwolf VK 66.01
『World of Tanks』が誕生する10年ほど前に、PlayStation用のゲーム『Panzer Front』がASCIIから発売されました。このゲームには、史実車輌のほかにも、E-79といった架空車輌が実装されていました。プレイヤーの皆さんから「いつE-79をWoTに実装するの?」といった質問をよく聞かれます。とても興味深い質問をありがとうございます。皆さんの戦車愛が伝わってきます。『World of Tanks』にはすでにたくさんの架空車輌が実装されていますので、現時点では「E-79」を実装する予定はありません。また他社が作り上げた架空戦車ということで、版権などの複雑な事情が関係してきますので、実装は難しいと考えています。
E-100 Henschelturm/Adlerturm
この戦車は中国のプラモデル制作会社が設計しました。設計をみてみると、Henschelが開発したE-100の代替砲塔のように見えます。インターネット上の歴史ファンの間では、Adlerwerkeが設計した砲塔だとの議論がされています。ですが、その両方とも正確ではありません。Henschelの設計ではなくKruppによる設計です。またAdlerはE-100のサスペンションの設計に携わっていましたが、砲塔の設計には関わっていません。E-100 HenschelturmとE-100 Adlerturmはどちらも空想にすぎません。
Sturmgeschuetz 40 T-34
この古い写真をご覧ください。見にくいかもしれませんが……上の写真に写っている戦車は数十年前に雑誌や本に掲載されたものです。かなり変わった戦車ということで話題になりました。鹵獲されたT-34の車台にStuG III F/8の車体を載せたものです。この写真を掲載した出版物のなかには、画像をわざわざカラー化したものもありました。この写真の戦車は完全に架空……もっと言えばPhotoshop加工によるものです。元となった写真(下)をご参考ください。
Flakpanzer T-34
未確認の情報筋から、Kampfgruppe Kienastは鹵獲したT-34に88 mm Flak 18 AA砲を搭載するなどの改造を試みていたとの情報提供がありました。その証拠写真として送られてきた画像をご覧ください。そして熱心なファンの皆さんから、この車輌を『World of Tanks』に実装して欲しいというご要望を定期的にいただきます。ただ調べたところ、この車輌の写真はPhotoshopでT-34-85に加工を加えたものだということが分かりました。Flak 18砲を搭載した戦車は実在します。チェコに大破したドイツ車輌が集積されている場所がありますが、そこでアメリカ軍によって発見されたPzIV戦車がFlak 18砲を搭載していました。
Jagdpanzer E-50
一風変わったこの戦車はHubert Canceによるデザインです。彼によると、E-50をベースにした駆逐戦車とのことです。Hubert Canceは搭乗員全員を戦闘室に配置できるように車体をデザインしています。彼がデザインしたJagdpanther IIについても、やはり搭乗員全員を戦闘室に配置するデザインでしたね。Panzerjäger Panther mit 12,8 cm L/55 (Pak 80)の設計図を見てみると、操縦主と砲手用の座席が車体内部に配置されています。実際にはこの場所には冷却装置が備えられていました。
15 cm Sturmgeschuetz E-75
Hubert Canceがデザインしたこの戦車は、戦車を特集した雑誌で紹介されました。E-75の車体と149 mm L/52砲を組み合わせた自走砲の噂を元にデザインされています。この自走砲に関してはわずかな情報が文献に残されていますが、誤情報だということがわかっています。砲については実際に計画案として残っていますが、1942年にVK 70.01用に設計されたものです。その他の資料を読み解くと、この計画案は自走砲ではなく、戦車のものだということが推察できます。
Sturmgeschuetz Maus
この戦車のデザインもHubert Canceによるものです。設計はほんの少し史実に基づいていますが、あまりにも情報が少ないですね。エンジンやその他の主要部品は、車体のどこに配置するのか明確ではありません。車体後部の戦闘室は細部まで設計されていますが……。
Kampfwagenvernichter Ausf.F (E-100) Krokodil
この戦車もHubert Canceによるデザインです。2007年に『Battailes & Blindes』で紹介されました。E-100の車体をベースにした駆逐戦車です。Jagdpantherにインスピレーションを受けてデザインした戦車だと言われています。ただ重量が車体前部にかかり過ぎてしまうのが気になりますね。このデザインのままだと、サスペンションや足回りが頻繁に故障してしまうため、この設計をベースに戦車を開発するのは不可能です。ただデザインはとても人気があり、『World of Tanks』に実装して欲しいとの声も頻繁にきかれます。
Kampfwagenvernichter E-90
E-100 Krokodilはインターネット上の熱いファンによって創作されました。架空戦車のE-90の車体をベースにしたKrokodilです。設計に問題があるため、実際には開発できませんが、興味深いデザインです。
Geschuetzwagen E-100
最後に、Wargamingが作った架空の自走砲を見てみましょう。2000年代後半にGeschuetzwagen E-100のモデルを作りました。戦車自体は完全に架空のものであったにも関わらず、すぐにでも開発できそうなくらいに精巧にできていました。Grille 17/21とよく似たこの車輌は、ドイツ技術ツリーの自走砲ルートの頂点に配置されました。