1916年9月15日、イギリス海軍によって開発された世界初の戦車Mark Iがソンムの戦いに投入されたことにより、陸上戦はこれまでにない「戦車戦」へと移り変わっていくとになります。
この記事では、この伝説の車輌の開発過程と如何に第一次世界大戦の戦略性を変えたかを紹介していきます!
第一次世界大戦におけるMark Iの重要性
イギリスMark I戦車
西部戦線は膠着状態に陥っていました。それまでの塹壕戦の特徴は、突破したい防衛ラインを砲撃し、何万という兵士をもって無理やり突破しようとするものでしたが、非常に大きな犠牲を払う作戦でした。何百メートルも離れた塹壕からの機銃斉射によって、多くの兵士が命を落としました。
この戦況を見かね、少数の投資家とエンジニアが同じ結論に至ります。それは、相手の塹壕に到着するまでの間、歩兵を守りながら無人地帯を走破し、塹壕と機関銃を破壊できる装甲車輌の建造です。戦場で兵士の命を守ることができる理想的な車輌案でした。
Mark Iが後続車輌の設計に与えた影響
イギリスMark IV戦車
開発されたMark Iは、当初は様々な改善点がありました。その走行速度の遅さから、敵砲撃の的となりやすく、また機関銃や大砲は車輌側面に実装されているため、車輌側面を敵側に向けなければいけませんでした。車内には照明もなく、エンジンから発生する熱によって高温になり、気化した燃料やオイルの臭気などによって車内環境は劣悪でした。
しかし、イギリス軍は戦場における可能性を見出し開発を続けました。そしてMark IVが1917年より製造開始されました。何よりも、これらの戦車はデザイン面だけでなく戦略的な観点からも未来の戦車の「設計図」となりました。
第一次世界大戦における戦略性の転換
当時の軍事技術は防衛に有利なものでした。仮に敵拠点へ対する突撃の初動が成功したとしても、敵の増援が駆け付ける前に突破地点から突入し目標を攻撃するのはほとんど不可能でした。
1916年8月、50輌の戦車がフランスのソンム川のイギリス軍に輸送され、9月15日、ついに戦車が初陣を飾ります。しかし用意された50輌のうちの半数が運用準備の不足で使用できず、さらに投入された多くの車輌がドイツ軍の反撃によって行動不能に陥ります。結果としてドイツ軍の防衛線を突破し、その後も数キロほど前進できたものの、戦車には無線機が装備されていなかったため連絡手段が限定されるばかりか、歩兵を先導して攻撃することにも問題がありました。大きな被害を与えることに成功しましたが、大戦果とまでは言えませんでした。
これらの教訓をもとに、戦車という新兵器の研究・開発は続けられました。
戦車の再現におけるWargamingの取り組み
Mark IV戦車を再現するにあたり、Wargaming内のデザインチームではまず、歴史コンサルタントなどの人々と車輌についての資料収集を行います。収集する資料は設計図やスケッチ、軍用写真に限らず、ニュースや3Dスキャンなど、あらゆるものが含まれます。
次に、デザイナーの「当時の兵器を表現」する作業に移ります。Wargamingでは、戦略的かつ戦術的特徴や、運用などを出来るだけ詳細に再現できるよう試みます。車輌の装甲厚も大事な要素です。速度に関するデータも収集しますが、ウィキペディアなどに掲載されているものとは異なり、様々な地形条件下で発揮された速度データを収集します。
これらすべての工程が終了すると「技術ツリー」への投入が検討されます。作成した戦車の性能バランスを考慮する作業です。World of Tanksでは歴史上戦ったことのない戦車同士が実際に戦うため、必ずしも史実通りの性能が最善という訳ではありません。大事なことは、どの戦車も強力過ぎず、また脆弱過ぎないことです。
このプロセスは一様ではありません。戦車によっては、テストは4週間で完了することもあれば6か月かかることもあります。
戦車の研究を円滑に行うため、Wargamingは世界中の戦車博物館と提携しています。これには研究チームからテストチームまで様々なチームが携わっています。
WoTを通じてプレイヤーの皆さまに楽しんでいただきたい点
どんな状況においても最強である戦車などは存在しません。それは実際の歴史上でもWorld of Tanksでも同様です。では勝利を目指すには何が大事なのか?それは事前準備です。使用する戦車の火力や装甲、移動速度だけでなく、ストロングポイントとウィークポイントといった各車輌の特性を把握しておく必要があります。そしてプレイ時には、敵味方両方の戦車の特性を瞬時に把握し、状況に合わせた対応をしなければいけません。さらに重要なのは地形の理解です。本ゲームは戦車戦ゲームであるため、地形を理解することは戦闘における行動と射撃位置を決める大事な要素となります。さらに、チームワークとコミュニケーションも勝利へのカギとなります。
Wargamingでは世界中の戦車博物館と提携しております。そのため、戦車の再現性に関しては出来うる限り詳細に行っており、本ゲームが世界最大規模のバーチャル戦車博物館となるよう努力してまいります。
プレイヤーの皆さまはもちろん、この記事を見ている方は戦車に対して高い興味をお持ちのはずです。ぜひご自宅のPCで『World of Tanks』をプレイいただき、戦車戦の片鱗に触れてみて下さい。
専門家: Richard Cutland
「British Army Royal Tank Regiment」に30年勤務した後、Wargaming.netにてHead Of Military Relations Europeを務める。また「Tank Nuts」のPodcastを配信。
記事の提供元: HistoryAnswers.co.uk
Richard "The Challenger" Cutland