戦車長の皆さま
『World of Tanks』がリリースされてから15年間、マッチング・システムにはさまざまな改善や調整が加えられてきました。一方で、現状のシステムが目指すべき水準に達していないのも事実です。マッチングに関するメカニズムは、ゲームにとって最も重要な要素のひとつだと考えており、このことを理解しているからこそ、継続的な改善を試みてきました。しかしながら、現在のアプローチを続けていても、目指すべき水準を達成することが難しいという結論に達しつつあります。そこでこの度、この課題の解決のための大きな一歩を踏み出すべく、これまでとは異なる新たなアプローチを採用することとなりました。
マッチング・システムのアルゴリズムと原則
マッチング・システムは、毎日数百万にも上る戦闘のチーム編成や調整プロセスの管理を行っているほか、常に変わり続ける待機中のプレイヤーの数を制御しています。これらの処理を行ううえで欠かせない役割を果たしているのが、マッチング・システムのアルゴリズムです。マッチングに関するすべてのリクエストは、このアルゴリズムによって処理、および計算が行われ、以下の原則に沿いつつ、チームが編成されていきます。
- 【戦闘のバランス】マッチングの規定に基づいた多様でバランスの取れたチーム編成
- 【戦場の多様性】飽きずにプレイを続けられる多様なチームおよびマップ環境
- 【スピードと効率】一定の水準以上のプレイ体験の担保と待機時間の最小化
これらの原則は踏襲しつつ、新たな機能を追加するため、マッチング・システムのアルゴリズムを一から組み直すこととなりました。アルゴリズムに手を加えることは、簡単な作業ではありません。軽微な調整にさえも、多大な時間を要するほか、アルゴリズムそのものの安定性やバランスを保つため、高度な技術的な修正や入念なテストが必要となります。では、このような困難な作業を行ってまで実装すべき変更とは、どのようなものなのでしょうか?以下で詳しくご説明いたします。
マッチング・システムへの重要な変更点
車輌ロールのバランス
新たなマッチング・システムでの大きな変更点のひとつは、チーム間での車輌ロールがより均等に割り振られるようになる点です。
簡単な例を挙げると、これまでは、ひとつのチームに超重戦車の
X
Maus
と
X
E 100
の2輌が割り振られ、もうひとつのチームに自動装填砲を搭載した
X
AMX 50 B
と
X
T57 Heavy Tank
の2輌が割り振られる、といったケースがありました。これらの4輌は、同じ重戦車ではあるものの戦闘における役割は大きく異なります。超重戦車はダメージの受け役やポジションの防衛を担う一方で、自動装填砲を搭載した車輌はダメージの稼ぎ役や味方への火力支援を担います。
新しいシステム下では、車輌ロールの異なる車輌が、より均一に割り振られるようになります。【例】
変更前(現行のマッチング) | 変更後(新たなマッチング) | ||
---|---|---|---|
チーム1 | チーム2 | チーム1 | チーム2 |
Maus | AMX 50 B | Maus | E 100 |
E 100 | T57 Heavy Tank | AMX 50 B | T57 Heavy Tank |
この仕組みにより、異なる車輌ロールを持った車輌がどちらか一方のチームに偏ることなくバランス良く割り振られ、より競技性の高い戦闘が増えることに繋がります。
車輌タイプのバランス
もうひとつの変更は、チーム内の同じタイプの車輌の数に、より厳しい上限を設定する点です。具体的には、ひとつチームにつき駆逐戦車は最大5輌*、軽戦車は最大3輌*といった制限を設けます。こちらは、前述の車輌ロールへの変更と併せて機能し、例えば、片方のチームに狙撃型駆逐戦車5輌が割り振られ、もう一方に攻撃的駆逐戦車5輌が割り振られる、といったケースが減ることになります。
この変更により、戦闘の展開が一辺倒になることを避けるとともに、それぞれのタイプの車輌が本来得意とする役割を真っ当し、かつ戦略的に立ち回れる展開を生み出すことに繋がります。
*将来的にそれぞれの車輌の上限数を調整する可能性があることをご了承ください。
Tier ±1の戦闘の増加
新しいシステム下では、車輌Tierの差が±1になる戦闘をより増やすことを優勢してマッチングが行われます。ただし、戦闘環境の多様性を保つため、Tierの差が±2になる戦闘を完全に廃止することはいたしません。つまり、より戦力に差がない車輌との戦闘が増える一方で、多様な車輌とのマッチングの可能性が残された環境になるということです。
より賢いチーム割り
特に人気の高い車輌がある場合、現行のシステムでは、自チームも相手チームも、その車輌で溢れかえる状況が発生することがありました。一部のケースでは、それ自体が戦闘に面白みを与えこともある一方で、戦闘の展開や戦い方の幅が狭まってしまうこともありました。
そこで、新システムでは、以下のルールが導入されます。
- 同じチーム内における全く同じ車輌の数に制限を設ける。
- 同じ車輌をチーム間でより均等に割り振る。
より賢く、より早い、柔軟な戦闘待機列の管理
戦闘待機時間の管理もマッチング・システムの大きな役割のひとつです。そのため、新システム下では、柔軟な戦闘待機列の管理を目指すため、リアルタイムでマッチングのルールを調整できるようになります。つまり、固定されたルールに固執せず、プレイヤーの分布や待機中の車輌の数を分析しながら、その場でマッチングのためのアルゴリズムが調整されるということです。
テストの結果が想定通りとなれば、この変更により、時間帯に関係なくバランスの取れたマッチングが実現されることになります。
新たなマッチング・システムのテスト
これまで挙げた変更をすべて実装できれば、マッチング環境が大きく改善されることを分かっていただけたかと思います。また一方で、変更の数が多いこと、そして技術的な課題もより複雑なものになるため、実装には入念なテストが必要だということもお分かりいただけたかと思います。そのため今後の数か月にわたって、「EU1」サーバーにおいて一連のテストを行う予定です。テストでは、異なるマッチング・アルゴリズムを試験的に実装しつつ、集めたデータを基にさまざまな調整を加えていきます。
また、より正確なテスト結果を計測するため、「EU1」サーバーでは、「遭遇戦」、「強襲戦」、「グランドバトル」の戦闘モードが一時的にプレイできなくなります。一方で、「ASIA1」を含むその他のサーバーでは、これらのモードで引き続きプレイできますので、ご安心ください。テストが実施されるサーバーでは、一時的にいつもと異なる編成のチームを目にする可能性がございます。これは、マッチング・システムへの変更を問題なく実施する中での過渡期に起こる現象ですので、ご理解いただけますと幸いです。
この度のテストの目的は、現在思案中の改善点が、プレイ体験のさらなる向上、そしてマッチング・システムのそれぞれのプログラムの安定に繋がるかどうかを確かめることです。現時点では、テストの期間が長引くことが予想されておりますが、テストにおける目的が達成されたことを確認し次第、変更点の本実装をできるだけ早く進める予定となっております。