戦車長の諸君!
9月上旬に予定されているアップデート1.22では、イギリス技術ツリーに新たな装輪式中戦車ルートが追加されるぞ!
新ルートはTier IV軽戦車「 IV Cruiser Mk. IV 」から分岐し、Tier V車輌「AEC Armoured Car」からTier X車輌「Concept No.5」までの合計6輌で構成される。従来のイギリス軽戦車ルートが、Tier V軽戦車「 V Covenanter 」から始まる正規の軽戦車ルートと、新たに登場する装輪式中戦車ルートに分かれると言い換えてもいい。13周年記念イベントの期間中に実装されたプレミアム車輌「GSOR 1010 FB」を除けば、『World of Tanks』初の装輪式《中戦車》となる。本記事では、新ルートを構成する各車輌の歴史的背景と性能を簡単に紹介する。だがその前に、まずはルート全体の特徴を俯瞰してみよう。
《装輪車輌》と聞いて『World of Tanks』プレイヤーが思い浮かべるのは、間違いなくフランス装輪式軽戦車、とりわけ《Panhard EBR 105》だろう。しかし、新ルートを構成する車輌はすべて、軽戦車ではなく《中戦車》だ。爆発的な走行性能は備えておらず、足の速さにモノを言わせた強気な偵察よりも、むしろ機動性と火力のバランスの良さを活かした、味方の布陣の弱点を埋める立ち回りを得意とする。
イギリス装輪式中戦車は、搭乗員3名構成を基本とし、どの車輌も高い攻撃性能を備えている。主砲は例外なく単発装填式で、口径はTierに応じて40 mmから105 mm。どのTierでも単発ダメージと貫通力の高さに対して照準時間が短く、射撃精度にも秀でているのが大きな魅力だ。その一方で、分間火力は決して高いとは言えない。中距離以遠からの火力支援を行ううえでは十分な性能ながら、車体が大きく、隠蔽率に難を抱えているため、慎重に立ち回らねば、すぐに見つかって窮地に追い込まれることも珍しくない。
攻撃性能の高さに対して、防御性能はお世辞にも優秀とは言い難い。車体の公称装甲厚はTier Xでも2桁、砲塔はもう少し頼りになるものの、頑丈と呼べるレベルからはほど遠く、基本的に被弾すればダメージを受けると考えたほうがいい。特に側面はHE弾でも貫かれてしまう可能性があるため、射線管理の徹底が極めて重要になる。
機動性はフランス装輪式軽戦車には遠く及ばないながら、最大前進速度が60~65 km/h、後退速度が30~32 km/hと、移動の方向を問わず、中戦車としては文句ない値となっている。さらに注目すべきはサスペンションで、装輪車輌ながら超信地旋回を行うことができるうえ、車輪が大破しても完全に移動不能に陥ることがない、という驚きの仕様を備えている。
もう少し具体的に説明すれば、車輪がひとつ大破すると前進速度と後退速度がともに約60%低下し、それ以降は車輪がひとつ大破する度に機動性がおよそ3分の1になっていくという仕組みだ。そのため、車輪がすべて大破しても前進4.5 km/h、後退2 km/h程度の速度でノロノロと移動することができるようになっている。それで危機を回避できるのかどうかはまた別問題、というのは間違いない。
イギリス装輪式中戦車は、高火力、高機動、軽装甲を特徴とし、戦場での主たる役割は、前線の味方に対する火力支援やチームの布陣に存在する弱点の穴埋めに求められる。
それでは続いて、新ルートを構成する個々の車輌を見ていこう。
冒頭でも述べた通り、新ルートの始まりを告げるのは、Tier V車輌「AEC Armoured Car」だ。第二次世界大戦期にアソシエイテッド・エクイップメント・カンパニー社が4×4輪駆動の軍用トラック「AEC Matador」をベースに開発した装輪式重装甲車で、時代を反映したシンプルな設計、そしてシンプルさが生み出す信頼性と汎用性の高さを特徴とする。兵器としては1942年に北アフリカ戦線ではじめて実戦投入され、第二次世界大戦中はもちろん、戦後も長期にわたって運用されている。装甲車の歴史の中で重要な役割を担ったモデルのひとつで、戦後の装甲車開発に大きな影響を残したことでも知られる。本作では、初期砲として40 mm砲が採用されているものの、モジュールの研究を進めて57 mm砲に換装すれば、分間火力は1,928HPにも至る。機動性もこのTier帯の平均的な中戦車や軽戦車と比べて高く、最大速度は60 km/hとなっている。装甲が薄いにもかかわらずサイズがやや大きいことにさえ気を付ければ、偵察車輌としても活躍できないことはない。
続くTier VI車輌「Staghound Mk. III」は、アメリカで開発・生産された後、レンドリース法に基づいてイギリスに供与され、改修を経たモデルのひとつだ。歴史的には、「AEC Armoured Car」と同じく、第二次世界大戦の北アフリカ戦線ではじめて実戦投入され、戦後も1948年のいわゆる第一次中東戦争やベトナムなど様々な舞台で運用されている。本作における「Staghound Mk. III」は、先行車輌の機動性を維持しつつも、主砲が75 mm砲にアップグレードされたことで火力がグッと向上している。わずかとはいえ装甲も分厚くなっているほか、視認範囲が360 mに届く点も見逃せない。ちなみに、「砲塔に見覚えがある」と感じたならば、なかなかの観察眼だ。「 VI Crusader 」と同じものを採用しているぞ。
Tier VII以降の車輌を眺めて最初に目につくのは、車輪の数が2つ増えて6輪式になっている点だろう。もちろん、変わっているのは見た目だけではなく、主砲その他の性能も順当に強化されていく。
技術ツリー上に最初に登場する6輪式の車輌「FSV Scheme A」は、1960年代に開発が進められたものの、最終的に頓挫した計画案のひとつで、実際に生産には至っていないという点でも先行する2輌とは大きく異なっている。性能面では、エンジン出力こそ低下しているものの、総重量がわずか9トンと新ルート全体で最も軽いことから、最大速度にあたる60 km/hに苦もなく到達できるようになっている。主砲には75 mm砲と76 mm砲の2種類が用意されているぞ。
Tier VIIIでは、再び史実車輌が登場する。「AEC Armoured Car」の代替兵器として開発された「Saladin (FV601)」だ。本車輌の運用は1958年に始まり、イギリス軍は言うに及ばず、中東、オセアニア、アフリカなど世界各所で実戦投入されている。本作では、優れた機動性と380 mの視認範囲を活かした味方の支援を得意とし、主砲には先行車輌と同じ75 mm砲と76 mm砲に加えて90 mm砲も搭載できることから、火力面でも更なる飛躍を見せている。
Tier IXに位置する「GSOR 1006/7」は、空挺車輌の計画案に由来し、それ自体は生産に至ることなく頓挫したものの、第1世代有線誘導対戦車ミサイル《Swingfire》の誕生に大きな影響を与えたことで知られている。『World of Tanks』における本車輌は、535馬力のエンジン、80 mmの砲塔装甲、そして65 mmの車体装甲が生み出す最大65 km/hの走行性能をひとつの長所とする。最終砲にあたる105 mm砲は、単発火力が弾種毎に390/390/480HP、貫通力は248/315/53 mm、そして弾速も1,080 m/s、1,240 m/s、1,080 m/sとバランスが良く、第2線からの火力支援を中心に立ち回り、機を見て狙撃や迎撃に転ずれば大きな活躍が期待できる。
新ルートの頂点に君臨する車輌は、名を「Concept No. 5」という。車輌HPは1,800HP、総重量24トンに対してエンジン出力は580馬力、車体装甲は70/40/35 mm、そして研究完了と同時に使用できるルート全体の最終砲は口径110 mm、貫通力は弾種毎に260/318/55 mm、そして単発火力は430/430/515 mmと、主たるパラメーターのすべてが順当に強化された性能となっている。分間2,205HPの継戦火力は、味方への火力支援や狙撃を中心に立ち回る車輌としては十分ながら、似た特徴を備えた同格車輌と比べると見劣りする点に注意が必要だ。これを最大65 km/hの走行速度とデフォルトで400 mの視認範囲でどう補うかが活躍のカギとなるだろう。−8度の俯角を備えていることから、起伏にストレスを感じることは少なく、弾速も弾種毎に1,230/1,420/1,120 m/sと(HE弾以外は)強化されているため、被弾面積を最小限に留めながら不用心な敵に攻撃を仕掛けていけば、大戦果に繋がるはずだ。
なお、先行車輌と比べて装甲厚が増しているとはいえ、いわゆる《紙装甲》の域を出ないことを忘れてはならない。数的不利の状態で真正面から撃ち合うなどはもってのほかだ。味方の快速車輌とうまく連携して、敵の布陣を把握しながら、《ヘイト》が自分に向かないように立ち回るのが肝要となる。アップデート1.22でぜひその性能をお楽しみいただきたい。
さぁ、イギリス装輪式中戦車を乗りこなせ!
© 2009–2024 Wargaming.net All rights reserved.