『World of Tanks』で戦闘を重ねていくうちに、忘れられない1戦を体験することがあります。すぐにリプレイをダウンロードして、友達や仲間にシェアしたくなるような戦闘。単独で敵車輌14輌を撃破したプレイヤーに授与される「ラシェイニャイ英雄勲章」を獲得した瞬間は、まさにそんな感動が味わえるでしょう。あまりにもレアで手に入れることが難しいこの勲章の名の由来となったラシェイニャイ。ラシェイニャイではいったいどのような戦闘が繰り広げられたのでしょうか？ さっそく歴史の紐をといてみましょう。
これまでにご紹介した英雄勲章は、戦闘で大きな功績を残した人物を讃えるものでした。今回の「ラシェイニャイ英雄勲章」は、ソ連第3戦車師団、ソ連第12戦車師団、そしてKV-2に搭乗していた戦車兵たちの偉勲を讃えています。
ソビエト侵攻作戦「バルバロッサ」の開始に伴い、ドイツ軍はリトアニアのドゥビーザ川近くのラシェイニャイの街を占領しました。それに反攻するためにソ連軍はたった1輌のKV-2戦車を送り込みます。これがのちに「街道上の怪物」の事件と呼ばれる戦闘に発展するのです。当時突貫工事で作られたこの戦車に関する情報はほとんど知られておらず、ドイツ軍にとってはまさに青天の霹靂だったと言われています。
6月22日にドイツ軍が先制攻撃を開始すると、クズネツォフ将軍はラシェイニャイでドイツ軍に反撃するように指示を出します。翌日23日、ソ連軍はKV-1戦車と、KV-1をベースに巨大な回転砲塔を装備させたKV-2戦車で反撃を開始します。ドイツ軍もこれに応戦しますが、ドイツ軍のPanzer 35(t)戦車と対戦車砲をもってしても、その堅い装甲を貫くことができず、ドイツ軍を驚愕させます。このソ連の重装甲戦車への攻撃で弾薬が尽きてしまったドイツ軍は、対戦車砲に頼らざるを得なくなります。ドイツ軍は自走砲、対空砲、粘着手榴弾など、持てる術のすべてを使い果たしましたが、ソ連軍の反攻を止めることはできませんでした。ドイツ第1装甲師団は最終的にKV-2から約27～55メートルの距離にまで近づかなければならなかったと言われています。
ソ連軍が反撃を開始した翌日、KV-2がたった1輌で多数のドイツ軍戦車と対峙します。これが今でも語り継がれる「街道上の怪物」事件です。敵の戦線深くまで侵攻したあと、たった1輌のKV-2がドイツ前衛部隊と第6戦車師団を繋ぐ街道のど真中に居座ります。このKV-2に補給線を断たれたドイツ軍は、4門の50 mm対戦車砲を使ってKV-2を蜂の巣にしようと一斉射撃を仕掛けます。しかしKV-2はその重装甲で全ての砲弾を跳ね返したうえに、152 mm榴弾砲でこの対戦車砲部隊をあっけなく片付けてしまいます。対戦車砲4門をすべて破壊されたドイツ軍は、通称「アハトアハト」と呼ばれる88 mm高射砲を用いようとしますが、ただの1度も射撃できずにKV-2に破壊されてしまいます。そこでドイツ軍は工兵たちを使い、夜間にKV-2の周囲に梱包爆薬を設置したのです。爆破によってKV-2を完全に破壊する算段でしたが、この爆破によって損傷したのは履帯だけでした。
翌朝、疲弊したKV-2とその搭乗員たちは気づきます。KV-2の弾薬を使い果たし、もはや反撃する余力がのこっていないことに。ここぞとばかりにドイツ軍は再び「アハトアハト」こと88 mm高射砲での攻撃を試みます。88 mm高射砲をKV-2の側面側に配置し、水平射撃を敢行したのです。複数の射撃のうち貫通できたのはたった2発だけでした。じりじりとドイツ歩兵隊が接近する中、KV-2の搭乗員は機関銃砲で応戦しましたが、ついに歩兵隊に至近距離の接近を許してしまいます。そしてドイツ兵が投げ込んだ手榴弾が戦車および搭乗員の致命傷となり、たった1輌でドイツ軍の進攻を食い止めたKV-2の戦いは終了しました。のちの報告によると、ドイツ軍兵たちはこの勇敢な敵戦車兵たちの栄誉を讃えて、正式な軍礼をもって弔ったそうです。残念ながら、搭乗員たちが埋葬された際に彼らに関するすべての記録が失われており、今日に至るまで「街道上の怪物」の搭乗員の身元は分かっていません。ただ名前や身元は分からなくても、第2次世界大戦時の最も忘れがたい戦車戦で勇敢に戦った戦車兵たちがいたことは永遠に語り継がれるでしょう。
- ミッション：ラシェイニャイ英雄勲章