日頃より『World of Tanks』をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
この度、プレイヤーの皆様から頂いたご意見・ご要望をもとに、自走砲のバランスを全体的に見直すことを決断いたしました。
日本のプレイヤーの皆様には ”自走砲” としてお馴染みの車輌クラス " SPG "は、World of Tanksでは特殊な車輌クラスと言えます。 また、本当に多くのプレイヤー様にプレイいただいている車種でもあります。
自走砲がWorld of Tanksに実装された当初は、その圧倒的な火力から攻撃特化型車輌として、そして時間が経つにつれて長距離支援車輌として確固たる地位を築きました。しかしその特異なバランスについては、賛否両論のご意見があったことも認識しております。
そしてこの度、皆様から頂いたご意見および弊社の統計情報を元に、スタンパラメータを調整する決断に至りました。
バランス調整の理由
展開2017年4月にアップデート0.9.18でバランス調整を行って以来、自走砲に対する大幅なバランス調整はありませんでした。2017年4月以降、新しい国家やルート、新マッチングシステムが導入されるなど、World of Tanks自体は大きな変化を続けてまいりましたが、その中で自走砲は取り残された状態でした。バランス調整を実行するには、緻密な解析と検証に長い時間が必要でしたが、今ようやく実行できる段階に到達したと判断いたしました。今回の調整まで長い時間がかかってしまったこと、そしてその間に多大なご不便をお掛けしたことを心からお詫び申し上げます。
まずはアップデート0.9.18以前に行った調整について見てみましょう。
アップデート 0.9.18 以前:驚異的ダメージ、自走砲のマッチング数
アップデート0.9.18実装前のWorld of Tanksをプレイされた皆様は、自走砲の単発ダメージがいかに驚異的であったか覚えていらっしゃることでしょう。待機中に突然の大ダメージを受け、逃げる隙も、避ける暇さえもありませんでした。もはや自走砲の前では、装甲厚は問題ではありませんでした。
Spoiler
自走砲の存在は大勢のプレイヤーのプレイスタイルに影響を及ぼしたことは言うまでもありません。重戦車や足回りの遅い車輌でプレイされるプレイヤーは、特に大きな影響を受けたはずです。リスクを避けるために、多くのプレイヤーが自走砲の砲弾が届かない安全な場所で行動するようになり、また有効な戦術をあえて見逃すようになりました。その結果として、ゲームの流動性が滞るようになりました。その当時、自走砲は次のような「火種」も抱えていました:
- 徹甲弾 (AP)、硬芯徹甲弾 (APCR) および対戦車榴弾 (HEAT) が貫通した場合、榴弾(HE)が未貫通だった場合の平均与ダメージよりも非常に高い致命的なダメージを与えることができる。
- 1チームあたりの自走砲マッチング数に上限がない。チームの半数以上の車輌が自走砲になることもあった。
- 小隊でランダム戦に出撃する際、自走砲2輌もしくは自走砲のみで小隊を構成することができた。自走砲で編成された小隊は、そのチームワークによってはマップ全域を自分たちのコントロール下に置くことができるため、戦況に与える影響力は絶大でした。
また、自走砲をプレイする側にとってもデメリットがありました。他の車輌よりもはるかに長い装填時間にも関わらず、射撃精度と着弾分布が非常に悪いことは、自走砲の圧倒的な攻撃力の代償と言えたでしょう。
アップデート0.9.18:自走砲の大幅な調整
2017年4月、アップデート0.9.18で多くの自走砲に以下の調整を行いました:
- 徹甲弾 (AP)、硬芯徹甲弾 (APCR) および対戦車榴弾 (HEAT) を廃止し、榴弾 (HE)のみとしました。
- 榴弾 (HE)の貫通力と単発ダメージを大幅に下方修正しました。
- 各チームあたり、自走砲のマッチング上限数は最大で3輌まで、小隊では1輌までに制限しました。
- 自走砲の射撃精度を向上し、照準時間を短縮、着弾分布を縮小しました。
- スタン・メカニズムの導入
自走砲をプレイしないプレイヤーに向けて自走砲から致命的なダメージを受ける機会を圧倒的に減らすと共に、自走砲をプレイしているプレイヤーに向けても命中しないケースを軽減させました。さらに、チームメイトとの連携が行いづらく、単独行動になりがちな自走砲を、効果的なチームプレイヤーへと生まれ変わらせるために、新たにスタン・メカニズムを導入しました。この新メカニズムは、自走砲の爆発半径内に居る車輌のパラメータを一時的に弱体化させる機能です。スタンメカニズムの導入と与ダメージ量の減少によって「どの戦線にいる味方を支援するか」を自走砲自身が選択可能となり、チームプレイが促進されると期待していたのです。
この調整による影響は自走砲によって多少の違いはあったものの、結果的に自走砲による装甲貫通数は大幅に減少し、自走砲の全体的な与ダメージ量が減少しました。
このバランス調整の結果として、全ての自走砲の貫通率が大幅に低下しました。具体例を挙げると、「Object 261」の貫通力は約1/7に低下し、Tier Xの自走砲の戦闘での与ダメージは平均で6%減少しました。
新たな問題点
アップデート0.9.18実装後、自走砲は長距離支援車輌として生まれ変わりました。特定のターゲットに驚異的なダメージを与える存在から、より多くのターゲットに損傷を与える存在になりました。自走砲をプレイする側は長距離支援車輌として、敵車輌が集まるマップエリアや、味方が援護射撃を最も必要とするエリアに気を配るようになりました。
しかしながら、スタン・メカニズムは新たに次の問題をもたらしました。
- 複数の自走砲からの砲撃でスタン状態が長時間に: 現在の仕様では、直前のスタンがいつ発動したかに関わらず、自走砲から砲撃を浴びるとスタンが発動するようになっています。複数の自走砲から次々と砲撃を浴びている状況では、スタン状態が長時間継続してしまいます。また現在はそのような状態を制限する機能もありません。重戦車や足回りの遅い車輌が複数の自走砲から砲撃を浴び続けると、パラメータが低下した状態で身動きが取れず、格好の標的となってしまいます。
- 被ダメージ無しでもスタン状態が長時間発生: 現在の仕様では、砲弾による被ダメージがあるか無いかに関わらずスタン効果が長時間発動します。そのため、自走砲からの砲撃が遠くに落ちた場合はほぼダメージを受けないにも関わらず、スタン効果が発動し車輌のパラメータが長い時間の間低下します。
上記2つの点を改善すべく、スタン・メカニズムに大幅なバランス調整を行うことを決断いたしました。今回の調整の目標は前線で戦う車輌が受ける総合的なスタン時間の短縮です。特に、複数の自走砲から立て続けに砲撃を浴びる状況下で、スタン時間が短縮できる調整を行いたいと考えております。
Spoiler
今回のバランス調整について
複数の要素を微調整し、総合的にスタン時間が短くなるようにバランスを調整します。
まずは、既にスタン状態にある車輌が自走砲から砲撃を受けた際のスタン時間です。この追加スタン時間を短くする予定です。
ここで、スタンの理論をご説明しましょう。
現在のスタン時間の計算方法
スタンの最長時間は次の2つの要素によって決まります:
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1つ目の要素は、各自走砲の砲弾の設定値の1つ「スタン定数」です。この値は「定数」の名が表す通り、ダメージ量に依存しません。各砲弾のスタン定数には0から1の値が係数として設定されています。皆様にもっと馴染み深い例を挙げるとすると、ガレージに表示されている最小スタン時間(秒)です。スタン時間は貫通力や弾速と同じように、砲弾のパラメータの一つであり、車輌や砲ごとに異なる値が設定されています。
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2つ目の要素は、砲弾によるダメージを元に計算されます。言い換えると、この値はダメージに依存しているため、毎回その値が変わります。
クライアントにはこの値は表示されていませんが、わかりやすく説明するために計算式をご紹介します。 スタン定数とスタン変数の関係を端的に説明すると、定数と変数の和は常に1になります。「Object 261」を例に見てみましょう。この自走砲の特性は次のとおりです:
- スタン定数 = 0.45
- 砲弾のスタン時間 (最大スタン時間 ) = 29秒
- 最小スタン時間 = スタン定数 × 最大スタン時間 = 0.45 * 29 = 13.05秒
この情報を元に、スタン変数を算出します。
- スタン定数 = 0.45
- スタン変数(%) = 1 - スタン定数 = 1 - 0.45 = 0.55
変更点: 具体例
具体例を混ぜて今回の調整点をご説明いたします。例えば、「Object 261」が「IS-7」に射撃したとします。
1. スタン定数を変更してスタン時間自体を短縮
ダメージ量に依存しないスタン定数の値を変更します。それに伴って、スタン変数の割合を5%上げます。「Object 261」の例ではスタン変数が0.55から0.6に変更されるため、スタン定数は0.45から0.4に変更されます。これにより「Object 261」の最小スタン時間が13.05秒から11.67秒へ短くなります。
2. スタン変数を変更して爆風によって受けるスタン時間を短縮
2つ目の要素「スタン変数」によって受けるスタン時間にも調整を加えます。この要素は前述した通り、ダメージに依存する値です。具体的には、砲弾の着弾点から車輌までの距離によって受けるダメージ量を調整し、結果的にスタン時間が短くします。現時点で爆発によるダメージ量の係数は、着弾点で0.5、着弾点から最も離れた地点(爆発範囲内)で0.15となっています。この「着弾点から最も離れた地点」にいる車輌への被ダメージ量の係数を0.15から0.05に変更します。これにより、二つ目の要素「スタン変数」の値を低くすることができ、榴弾 (HE) が装甲を直撃しない限りは、爆風からの損傷を低減させることができます。
3. 既にスタン中であった場合に受ける追加スタン時間の短縮
既に自走砲から砲撃を受けてスタン中である際に別の自走砲から砲撃を受けた場合、追加されるスタン時間を現在の半分(1/2)に短縮します。
4. 装備品「内張り装甲」を装備した際のスタン時間を短縮
「内張り装甲」を装備している車輌がスタン中に他の自走砲から砲撃を受けた場合は、追加スタン時間が更に少なくなるよう優遇されます。内張り装甲(特大)を装備している場合は、スタン時間が20%短縮され、内張り装(大)を装備している場合は10%短縮されます。例えば、スタン中に自走砲から砲撃を受け、その砲撃によるスタン時間が15秒だったとします。内張り装甲(特大)を装備している場合は、追加スタン時間が12秒に、そして内張り装甲(大)の場合は13.5秒に短縮されます。
追加スタンによるスタン時間追加のスタンパラメータ調整について
複数の砲撃によってスタン時間が重複したとします。現在の仕様では、前回のスタンの残り時間よりも追加スタン時間が長い場合は、攻撃を受けた時点から追加スタン時間が開始します。詳しくは次の説明をご覧ください。
現在の追加スタンパラメータ仕様
最初に砲撃を受けた際のスタン時間が20秒だとします。8秒後に再び砲撃を受け、その追加スタン時間が23秒だとします。現在の仕様では合計スタン時間は8+23=31秒になります。
今回の改修で、追加スタンの時間が半分になりますので、合計スタン時間は31秒よりも短くなります
調整後の追加スタンパラメータ仕様
最初のスタン時間が20秒だとします。8秒後に再び砲撃を受け、その追加スタン時間が23秒だとします。ここで追加スタン時間が半分に短縮されますので、合計スタン時間は8+12=20秒になります。
この例では、合計スタン時間が31秒から20秒に短縮されることになります。これにより、複数の自走砲から集中砲火を受けた際にスタン時間が終わらないケースが減り、現在より反撃や後退などの余裕ができるのではないかと予想しています。このように、調整後は複数の自走砲から砲撃を受けた場合のスタン時間が大幅に短縮します。また追加スタンを受けても、スタンタイマーに全く影響がない場合もあります。
更に、計算後の追加スタンが5秒未満の場合は追加スタンとして適用されません。
自走砲の特性変更について
今回の調整はほんの僅かのように見えますが、総合するとスタン時間の大幅な短縮に繋がると予想しています。特に追加スタン時間が大幅に軽減されると期待しています。この調整による影響の大きさ、範囲、方向は、各車輌の設定や戦闘能力によって異なります。そのため、今回のスタンパラメータの調整に合わせて、各自走砲の特性を変更する必要があります。
まずは、次の車輌の爆発半径を5%縮小します:
- G.W. Panther
- G.W. Tiger (P)
- G.W. Tiger
- G.W. E 100
- M12
- M40/M43
- M53/M55
- S-51
- SU-14-1
- SU-14-2
- 212А
- Conqueror Gun Carriage
- Object 261
特定車輌の調整:
展開Conqueror Gun Carriage:
- 弾速を35m/秒減速 (395から360に変更)
G.W. Panther:
- 射撃精度を0.02下方修正 (15cm s.F.H. 18 L/29.5は0.66から0.68、15cm s.F.H. 43では0.62から0.64に変更)
- 装填時間を1秒増加 (15cm s.F.H. 18 L/29.5は27.2から28.2、15cm s.F.H. 43では26.0から27.0に変更)
- 砲塔旋回中の着弾分布を0.02拡大 (15cm s.F.H. 18 L/29.5は0.46から0.48、15cm s.F.H. 43では0.44から0.46に変更)
自走砲のバランス調整の概要や方針は以上の通りとなります。なお、開発の進捗やスーパーテストの結果等により調整内容を変更する場合がございます。予めご了承ください。
今後も皆様から頂いたご意見・ご要望を元に、適宜ゲームバランスの調整を行っていく予定です。
ぜひ今回の自走砲バランス調整に関するご意見・ご要望をフォーラム、または以下のアンケートフォームまでお寄せください。
ご迷惑をおかけいたしますが、今後とも『World of Tanks』を、よろしくお願い申し上げます。