[新エピソード!] バトルパス・シーズン2: ストーリー

戦車長の皆さん!

現在バトルパス・シーズン2が絶賛開催中です。イベントの進み具合はいかがですか? シーズン2ではデイモン・キルモア (Damon Kilmore) とアンジェラ・ミロトワ (Angela Milotova) の2人のエース戦車兵が、ナンバーワンの座を懸けて競い合います。ふたりのライバル関係や、ここにいたるまでの感動ストーリーを、ぜひお楽しみください。これから二人は一体どうなっていくのでしょうか?

バトルパス・シーズン2の開催期間中は、最新のエピソードを順次公開予定です。ぜひお見逃しなく!

バトルパスについて

2人のエース戦車兵

Damon Kilmore
国籍: アメリカ

常に冷静で、抜け目のない経験豊富な車長。20 年に渡る兵役を通じて、多くの困難を勇敢に乗り越えることで自らを律する強さを身に付け、戦友たちから尊敬を集めている。戦場では名誉と厳格な規律を重んじ、交戦規定を遵守する。その類まれな功績から、彼の小隊は一種の伝説のような扱いを受けている。熱烈なサーファーで、自らのサーフボードを幸運のお守りとしていつも手元に置いている。

Angela Milotova
国籍: チェコスロバキア

意志が強く、強情な女性。幼少期に父から戦車の操縦技術を学んだが、後に母親の後を追って医学の道に進んだ。アカデミーの卒業後、野戦病院で輝かしい経歴を積み上げたものの、戦車隊への転属を繰り返し希望し、戦車長としての能力を最大限に発揮する機会を待ち望んでいる。

エピソード一覧

エピソード1: 故郷への長い道のり

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  • 2話
  • 3話
  • 4話

Milotova、Badger、そしてKilmoreの小隊が燃え上がる敵駆逐戦車を取り囲んだ。Pattonの砲塔装甲が優れていなければ、これがMilotovaの最後の戦いになっていただろう。

「作戦を中止し基地に戻る。Milotova、話がある」

「Kilmore中尉、失礼ですが、何についてでしょう?」

「何についてとはどういう意味だ?お前は命令に背いたんだぞ!勝手に敵地に踏み込んだだろう。それも単独で、正確な情報も持たずに」

「私はただ、敵が待ち伏せている可能性を知らせたかっただけで……」

「そんな命令はしてない!基地に戻ったら、お前の小隊長と話をする!」

「あの方はもういません……生き残ったのは私1人です」

普段ならば、任務が成功した後の帰り道には、冗談を言いあったり、ふざけたり、戦いの話で盛り上がったりするものだ。しかし今回、無線機は静かなままだった。

戦いを経験すれば、まったくの赤の他人が最高の戦友に変わることもある。だから、戦車を1輌失うだけでも打ちひしがれるような思いをする。しかし今日、彼らは小隊を丸ごとひとつ失ったのだ。

Kilmoreが言い過ぎたのは明らかだった。名前と相まって時として「鬼」とも呼ばれる彼自身が、それを一番理解していた。自分がAngelaを支えてやらなければいけないこともわかっていた。Kilmoreは話が上手な方ではなかったが、慎重に言葉を選んだ。

「何があったのか教えてくれ」

「私たちは正午に出発しました。予定されていた通り、中尉の隊の30分後です。周辺地帯の偵察を行っていました」

Milotovaは気丈で勇敢なことで知られていたが、小隊を丸ごと失った彼女がどうしてここまで冷静に自制心を保っていられるのか、Kilmoreは理解に苦しんだ。

「突然、森の方から集中砲火を浴びました。私たちが近くまで寄ってきて、罠にかかるのを待っていたのでしょう。先頭にいた車輌はすぐに破壊されました。回避する隙すらありませんでした。最初の一撃の後、私たちは散開し、隠れる場所を探しました。最終的に、こちらが3輌、向こうが4輌となりました。そして、有利な位置を奪い合う、長い戦いが続きました。最終的に、私の小隊で生き残ることができたのは私だけです」

「なぜ基地へと真っ直ぐに戻ってこなかった?」

「中尉に伏兵の危険を知らせたかったからです。無線機を繋げようとしましたが、壊れていて通信範囲も限られていました。やっと電波を受信できるようになったと思ったら、Badgerが視界に入りました。Badger、私はあなたまで失うわけにはいかなかったんです!」

「Angelaに借りができたな!」

「お前は黙っていろ!」

BadgerはKilmoreの小隊に所属していなかったが、基地へ戻るまで黙ったままだった。「鬼」には、部隊の全員に命令を下す権限が与えられていたからだ。

「いいか、Milotova。Pattonの砲塔がここまで強力でなければ、俺たちは今頃、お前の戦車の残骸を拾うことになっていたはずだ。伏兵から俺たちを救いたかっただと?お前は自分を窮地に追いやっただけだ。間抜けな新入りにありがちなミスだ。最後の敵を倒すまで、戦いは終わらない。この話は後でまたする」

エピソード2: 帰還報告

  • 1話
  • 2話
  • 3話
  • 4話

中隊長は腰を下ろすと、落ち着いた様子のAngelaと憤慨するKilmoreを交互に見やった。

「こいつはもう少しで味方の誤射を受けるところだったんですよ!こんな新入りは前線に必要ありません。衛生兵を続けさせた方がずっとマシです!」Kilmoreは、腕は立つが戦闘経験が全くないAngelaの行動に怒りを隠そうともせず、そして以前と同様、Angelaを戦場から遠ざけようと中隊長の説得を試みた。

「新入り?失礼ですが、Kilmore中尉、確かに私は元はただの操縦手ですが、自分の戦車を任されるようになってからもう大分経ちます。中尉の部下としてお役に立てることをご理解いただきたいのですが」

Kilmoreは激怒した。

「鬼」と渾名されるKilmoreの小隊は、エリート部隊として知られていた。前線に身を置く戦車兵であれば誰もが彼の小隊に加わることを夢見ていたが、自らそこに名乗りを上げようとするものは誰もいなかった。

「何様のつもりだ!お前は私の部下たちの実力を知った気にでもなっているのか!?あいつらは無数の作戦を、かすり傷ひとつ負わずに遂行してきたんだ!それに比べてお前はどうだ?戦場に足を踏み入れた途端に救助が必要になるだろう。お前には向いてないんだ、Milotova」

「仲間を救うためにやったことです!中尉だって、まるで明日なんかないかのように戦っているじゃありませんか!自分の命だけでなく、隊員全員の命まで危険に晒して……」

「一緒にするな!」

Kilmoreは、感情的になったAngelaの発言を突然さえぎった。Angelaは問うように一瞥し、続きを待ったが、Kilmoreはそれ以上語ろうとしなかった。

「話は以上かね?」双方の意見を聞き終え、中隊長はようやく口を開いた。もう十分だと判断したのか、あるいはAngelaからさらに質問を受けることを嫌ったのだろう。

「Milotova軍曹、状況を鑑みるに、君が取った行動は適切とは言い難い。ただ、その行動のおかげでBadgerの車輌や搭乗員たちを失わずに済んだようだ。臨機応変な君の助けに感謝する」

「Kilmore中尉、君には現在の状況をよく考えてもらいたい。小隊がほぼ丸ごと1つ失われたのだ。これ以上、我が軍の戦車兵たちに負担をかけるようなことは慎んでくれ。そしてMilotova軍曹、小隊の編成はすでに完了している。君の実力を見せてくれたまえ」

Kilmoreは不満を露わにした。「次こそ、こいつは基地まで戻ってこれないかもしれませんよ!」
「口を閉じたまえ。話は終わりだ。解散!」

Milotovaはすぐに中隊長の執務室を後にしようとしたが、扉を閉める前にこう告げた。「医者としての過去は、戦車に乗り込んだ時に捨てました」

エピソード3: 嵐の誕生

  • 1話
  • 2話
  • 3話

Angelaの父親は優秀な操縦手だった。幼くして母親を亡くしたAngelaを、父親はよく戦車の基地に連れて行ってくれた。父親にしてみれば戦車に関する知識や技術を教えるつもりなどなかったのだが、子供の純粋な好奇心も手伝って、Angelaは父親のすることを熱心に真似て遊んだ。

いつしか装甲車輌の魅力に引き込まれていったAngelaは、次第に戦車の操縦の腕もなかなかのものになっていった。そして、すっかり戦車の魅力に取りつかれた彼女は、やがて父親と同じ道を夢見るようになった。しかし「戦車は女の仕事じゃない」と何度も説得され、母親と同じ医療系の学校に進学した。卒業と同時に父親のもとに戻り、医療スタッフとして軍に従事することになったAngelaだったが、いつか戦車を意のままに操縦したいという情熱の炎はくすぶり続けていた。

幼少のころから、Milotovaは人の命を救うことが自分の使命だと感じていた。医療スタッフとして働き始めた初日から、戦場で負傷した兵士たちや生死の境を彷徨っている兵士を救うための奮闘が始まった。日々の忙しさに戦車を操縦する夢はいつしか完全に忘れ去り、命の現場に没頭していた。

そんなある日、重傷を負った戦車兵が診療所に担ぎ込まれた。すでに手の施しようがない状態だった。彼の命の灯は今にも消えようとしている中、ほぼ意識がない状態で彼は何度も「あとたった1輌……戦車が必要なんだ……」とうわ言のように呟き続けた。その時、幼いころから抱き続けていたあの夢がAngelaの脳裏に甦ったのだ。もし私が「その1輌」になれたら? もし負傷した兵たちを治療するより、戦場で兵士たちが負傷するのを防げたら?

くすぶり続ける思いをいだきながら戦場で救護活動していた日のことだった。味方の戦車から負傷兵を脱出させる手伝いをしていたところ、Angelaが乗ってきた車輌に敵自走砲の砲弾が命中したのだ。車輌も、乗っていた仲間も失い、助かったのはAngelaと戦車の中にとらわれた負傷兵だけだった。とっさに戦車に乗り込むと、負傷兵を載せたままAngelaは戦場から全速力で退却した。幼いころに父親の見よう見まねで身に着けた操縦技術を、ようやく活かすことができた瞬間だった。

この時のAngelaの勇敢な行動に対して勲章が授与された。そのことはもちろん嬉しかったのだが、この出来事が彼女の人生の転機となったのは言うまでもない。あの日、戦場に赴いた救護班の中で助かったのは彼女だけだった。そのことがきっかけとなり、ついに父親と同じ道を歩む決心をしたのだ。優秀と誉れ高い父親の名をけがしてはならない。Angelaは戦車の操縦手としての訓練を完璧なまでに完了した。どんなに長い月日がかかってもいい。Angelaにはどうしても入りたい小隊があったのだ。Angelaの決心はゆるぎなかった。

エピソード4: ヘルハウンド

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  • 2話
  • 3話

長い療養だった。あの戦闘で生き残れたのは、KilmoreとRamirezだけった。経験が彼らを助けたのか、それとも幸運に救われたのか、誰も知る由もなかった。Juan Pabloは思ったよりも早く回復したのだが、Damonはかなり長い間、同じ悪夢に苦しまされた。寝ても覚めても、考えるのは“あの戦闘”のことだった。生き残るべきではなかった、あの戦闘。
Damonの脳裏に“退役”という言葉が何度も浮かんだ。だが、自分がここで辞めれば、必死についてきてくれた後輩たちはどうなる? 彼は前線に戻る決心をした。再び前線に赴くことで、彼の心と脳裏に焼き付いた痛みと罪の意識から、ほんの少しだけ許される気がした。

しかし不幸というものは重なるものだ。その数日後、怪我から回復したRamirezに親戚から手紙が届いた。大好きだった彼の祖母が亡くなったという知らせだった。Ramirezに残された家族は祖母だけだった。お互いに頼り頼られ暮らしてきた彼女だけが、Ramirezを現実につなぎ留めておく唯一の存在だった。その彼女がこの世を去ったのだ。

「これからどうすればいいんだ? 俺にはもう誰もいない。ただの独りぼっちさ」

「休暇を取って、少し休んだらどうだ」

「それでどうする? みじめな人生を送るのか? 鎮痛剤で自分を誤魔化しながら、意味のない人生の中で廃人になれって? 俺はそんな人生はまっぴらさ。俺は最前線を生きる男だ。俺は戦争しか知らない。それしかできない。だから俺が終りだと決めるまで、戦い続ける」

Ramirezの言葉は、Damonにあることを思いつかせた。ふたりの悩みを解決するあることを。そしてDamonは「Pipeline」と「Sheridan」のたった2輌で小隊を編成したのだ。

搭乗員は生まれながらの戦士と呼ぶにふさわしいエリート戦車兵のみで構成された。彼らは常にこれが最後の戦いとでもいうように勇猛果敢に戦った。そして何よりも、敵を殲滅するために全力を尽くした。

その非凡な戦いぶりとは反対に、小隊名は「Kilmore’s Cavalry」と極めて平凡だった。だが時が経つにつれて、まるで鬼神のように難しい任務をこなしていく様や、怖れを知らぬ戦いぶりに、次第にDamonの小隊は「ヘルハウンド」と呼ばれるようになっていった。

エピソード5: 告白

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Kilmoreほど自分のことを話さない男はいなかった。ぶっきらぼうで傍若無人。誰に対しても平等に乱暴なKilmoreに対しては、上官でさえも彼との衝突を避けたがった。ただKilmoreは誰にも心を開かないわけではなかった。彼でさえ心を許すことができる相手がいる。ごく限られた相手だったが。

いや、彼が心から信頼する人間はたったひとりしかいなかった。その人物とは、彼の右腕であり戦友、そして近しい仲間であるRamirezだった。RamirezこそDamonが唯一信用し、心の内を打ち明けられる仲間だったのだ。

ある時、Ramirezは不可能を可能にしてみせた。Kilmoreにとって“我慢ならない女”Milotovaについて、その堅い口を開かせたのだ。

「彼女優秀だよ、Damon。戦術も巧みだし、難しい状況下でも冷静さを欠いたことはない。彼女はうちの小隊にうってつけの人物だ」

「オレの搭乗員の採用基準は知ってるだろ? ごく一般的な採用基準だが」

「知らないね。むしろその採用基準っていうやつを聞かせてくれよ」

「それは極秘事項さ」

「これは例外ってことで、教えろよ」

Kilmoreは軽く頭を振ると苦々しく口元を緩めた。

「いや、ダメだ。いくら君でもダメさ。気にかけてくれているのは嬉しいが、もうこれで2度目だからな……。これ以上話すわけにはいかないさ。ただ言えるのは…“条件”を満たしているだけじゃダメなんだ。それというもの……」

そう言いかけてKilmoreは口を閉ざした。一瞬気まずそうに瞳を彷徨わせると、Kilmoreは気を取り直して話を続けた。

「彼女の性格なんだ。彼女を見ていると、まるで自分の息子を見ているようなんだ。彼女にはオレの息子みたいに終わって欲しくないんだ。絶対に」

Kilmoreの懺悔とも後悔ともとれる発言に、今度はRamirezが言葉を失った。

「分かるよ。だがな、もしかしたら彼女が俺たちの命を助けてくれる日が来るかもしれないぜ。彼女がBadgerを救った時みたいにさ……」

Kilmoreはそれに答える言葉を探すように瞳を空に彷徨わせると、迷いを振り切るように力強く立ち上がった。

「さあな。報告の時間だ。行くぞ」

エピソード6: 嵐の部隊

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彼女の小隊が全滅してからというもの、Milotovaと彼女の仲間たちは前線に戻ることができないでいた。どの小隊にも空きのポジションがないのだ。

あの“Storm”をその配下におけるのはKilmoreくらいしかいなかった。だが彼は断固として彼女を引き受けようとしなかった。

なぜこれほどまでに彼女を拒絶するのか。Angelaはその理由を探ろうとした。中々見つからない糸口に、Angelaはついに中隊長の事務官に彼のプロフィールを探すように頼み込んだ。

最初は断っていた事務官だったが、とりわけ謎に包まれたKilmoreに対する好奇心の方が勝った。Kilmoreは最も優秀な指揮官で、彼の小隊は生きる伝説と言っても過言ではない。それなのに彼の小隊が結成される前のことは、誰も知らないのだ。

これまで彼は優秀と誉れ高い戦車兵の採用を何人も断ってきた。とりわけAngelaの採用については頑なに拒否している。理由は一体? 好奇心に突き動かされた書記官が見つけたのは、極秘に指定されたKilmoreのプロフィールだった。極秘のプロフィール。そんなものを目にするのは初めてだった。

そうこうしているうちに、中隊長の下で新たな小隊が編成された。

ただこの小隊には、ある条件が課せられていた。他の2輌の搭乗員はすべて新人で、彼らの訓練はすべてAngelaの肩にかかっているという条件だ。

あくまでも訓練。実戦でのような激しい任務は担当できない。ようやく小隊に入ったものの、Milotovaは面白くなかった。このままでは人命を助けるという誓いを果たすことができないのだから。その一方で、忙しさに気を紛らわせることができた自分にもほっとしていた。このひよっこたちを実戦に備えて訓練するという任務を授かり、何と言っても自分の居場所をついに手に入れたのだから。

自分の居場所を手に入れたAngelaは、Kilmoreの小隊への移動申請を取りやめた。それを知ったDamonは激怒した。中隊長はMilotovaを任務から下ろさなかっただけではなく、指揮する小隊さえ与えたのだ!

Kilmoreは落ち着きを取り戻すと、自分自身を納得させた。Angelaはもうこれ以上、彼の邪魔をすることもなければ、彼女自身を危険にさらすこともない。彼女の“任務”は比較的安全なのだ。

エピソード7: 食器棚の骸骨

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Milotovaは心の中で叫んでいた。以前よりも任務に送り出されることが少なくなり、自分の時間が持てるようになった。その時間を使ってKilmoreのことを調べていたのだ。彼女を拒否する理由が必ずどこかにあるはずだった。だが調べても、調べても、手がかりすら見つけることができなかった。Damonのプロフィールは極秘指定されている。どうやっても入手不可能だ。

そこで彼女は周りの人間に彼の過去について聞いてまわることにした。「ヘルハウンド」が編成された後に入隊した者たちは何もしらなくて当然だ。だが知っている人間でさえ、何も話したがらなかったのだ。Badgerだけが何かを知っていた。それというのも、彼が入隊したときにはまだ「あの」戦闘についての噂が出回っていたからだった。

噂というのは、若き希代の戦車兵Mikey Bransonについてだった。彼は任務の前日に操縦手に着任した。

Kilmoreはそのことが気が気ではなかった。作戦の結果をあれこれと想像しては、寝付けないでいた。結果から言うと、その作戦は全てが悪い方向に転じ、生還できたのはKilmoreとRamirezだけだった。

「そのMikeyって、誰だったのかしら? 私が調べたところでは、彼はKilmoreの親戚のひとりだとか。でも確信はないのよね。苗字は違うし、顔だちも似てないんだもの。とにかく、なんでこんなに気になるのかしら? 私たちみたいな弱々しい人間は彼の小隊には絶対に参加できないのよ。もう諦めなきゃ」

エピソード8: アドバイス

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「静かなる部隊」と冗談で揶揄された「嵐の部隊」は、その名の通り激しい戦闘を繰り広げるようになっていた。Milotovaの隊の若き戦車兵たちは、戦闘を重ねるごとにみるみると実力をつけていき、中隊長の目に留まるようになるまで時間はかからなかった。そしてやがて難易度の高い任務を任されるまでに成長していた。

その頃Kilmoreはすでに気づいていた。Angelaにも危険な任務が任される日がいずれやって来ることを。Angelaの能力を考えれば、それは避けられないことだった。ある日、DamonはAngelaの側の席に腰を下ろした。

「最近……調子はどうだ?」

Milotovaは驚きのあまり声もだせなかった。いまだかつて誉め言葉すら掛けてくれたことがないKilmoreが、自分から声をかけてきたのだ。一瞬の沈黙の後、Milotovaは凍り付いた唇を開いた。

「まあまあよ。負傷者もなく生還できてるわ」

「あの“Storm”の砲塔に傷がついたな。ふたつ。相手はGrilleか?」

「ちょっと待って……何で知ってるの? あなたはそこにいなかったのに」

「いなくても分かるさ。あの車輌にあんな傷を残せるのは、あいつくらいしかいない。でもあの角度で撃たれたのはラッキーだったな。砲塔を覗かせていたのか?」

「仲間が側面攻撃を仕掛ける間、やつを引き付けておく必要があったのよ……」

「Angela、君はもう偵察訓練の任務に就いているわけじゃない。オレなら砲塔で跳弾できる。でも君の「チェコ」では無理だ。君の車輌は総弾数も豊富だし速度も優秀だ。再装填するまで待って、それから速い足を活かして一気に攻撃を仕掛けるんだ。分かったか?」

「分かったわ」

「よし……。おい! Ramirez! 待てよ! オレを置いてどこに行こうって言うんだ?」

そう言うと、Kilmoreは風のように去っていった。
Kilmoreが――あのKilmoreがアドバイスをくれた。にわかに信じられない気持ちを抱えながら、Milotovaはしばらくその場に座り込んでいた。

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