My Favorite Tanks 第10回 ヴィッカース Medium Mk. II / 野上武志

Vickers Medium Mk. II / 野上武志

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今人気のイラストレーター、漫画家の方に、World of Tanksに登場する車輌の中からお気に入りの一輌を選んで描いていただき、素敵なイラストと車輌解説でご紹介をする連載イラストコラム企画の第二弾 「My Favorite Tanks」 。

第10回は「萌えよ!戦車学校」でお馴染みの野上武志先生に、第二次大戦がはじまるまでの戦間期の間にヴィッカース社により開発され、World of Tanks ではイギリスツリーのTier II 中戦車として登場する 「ヴィッカース Medium Mk.II」の演習中のほのぼのとしたワンシーンを描いていただきました!

お楽しみください!

 


中戦車 ヴィッカース Medium Mk. II

野上武志先生のコメント

ヴィッカース社のMk.II 戦車です。「萌えよ!戦車学校7巻」の描き下ろしエピソードで戦間期のイギリスの戦車開発史というのを描きまして、悲劇の天才軍事理論家、ジョン・フラー大佐とその仲間たち、別名「戦車男」たちが作り上げた戦車がヴィッカース Mk.I、その改良版がMk.IIとのことです。

実際のところ、WGJの担当さんから「ゲームに出てくる戦車で描いてください」とのことで、実は自分が大好きな戦車が軒並みオミットされてたり、すでに描かれてたりした中、これが見つかってラッキーでした。

この戦車、実は結構味わい深くて、エンジンが車体の前部左側にあるんですよね。だから戦車の後ろ側には乗員乗降用のハッチが付いているのです。のちのイスラエルのメルカバ戦車っぽくてちょっとわくわくします。

第一次大戦が終了してその後戦車がどんな感じに発展するのか、世界各国の軍事業界の人たちがいろんな予想をしていた中この戦車が生まれ、しかも結局イギリスは派閥争いとか何やらの中でせっかくの理論成果を捨ててしまい、第二次大戦当初苦戦するという面白すぎる歴史の中に作られたこの戦車、あまり有名ではありませんが好きな戦車です。
ていうか、マンガ描くまで知りませんでしたが描いてる間に好きになりました。

今回の絵は、そんな戦間期の戦車ということで、演習中にセーラー服の幼女たちが群がってるという感じにしました。
彼女らにかかれば、この鉄の塊もいい遊具でしかないのでしょう。そして、その方が戦車にとっては幸せだと僕は思うのです。

 


車両の解説

イギリス陸軍は、第二次世界大戦がはじまるまでの、いわゆる戦間期と呼ばれる時期に多数の戦車を試作している。もっとも、その大半はベースとなる車輌にちょっとした改正を加えた程度だが、ヴィッカース社のMedium Mk.II もそんな戦車のひとつだ。

Medium Mk.II は、同社が1924年に開発したMedium Mk.I の発展型で、Mk.C 戦車の代替として開発された。改修型も含めて生産時期は1925年から1934年と長く、戦間期を代表するイギリス戦車であった。基本的にはMk.I とシャシー、サスペンション、トランスミッションなどを共用している。だが、運転手用バイザーは車体前面から、座席の真上に移されて目立つ形状となり、砲塔の後部はかなり斜めに切り欠かれて、機銃が対空射撃にも対応できるようになっているなど、車体の上部構造はかなり変更されている。またサスペンションは強化された上で、装甲鈑で覆われて耐久性が向上し、新型クラッチも採用された。ただ、同じエンジンを流用したため、重量増加分は速力は低下している。

ヴィッカースMedium Mk.II は、歩兵を支援して敵塹壕を制圧する役割と、敵戦線を突破後に戦果を拡張する役割の両方を兼ねていた。しかし当然、これを達成する万能戦車としては価格が高くなり過ぎて、十分な数が揃えられない。そこでイギリス陸軍では、前者を歩兵戦車、後者を巡航戦車として役割を分け、それぞれの機能に特化した安価な戦車を作ることで数を確保しようとした。こうして後継戦車が揃いはじめると、Medium Mk.II は徐々に前線から姿を消し、もっとも多く割り当てられていたエジプト派遣部隊でも、イタリアと戦争が始まる1940年6月までには姿を消していた。ドイツ軍のイギリス本土侵攻が懸念された時期には、片端からかき集められて本土防衛隊に配備されることもあったが、結局、Medium Mk.II は実戦を経験していない。

しかし1941年秋に、ソ連と継続戦争を戦っていたフィンランド軍が、ヴィテレ(Vitele)駅の近くで、エンジンや主砲を持ち去られた、数両のMedium Mk.II の残骸を発見している。これはキューポラを省略し、対空機銃の仰角確保用の切り欠けもなくして砲塔をシンプルとした上で、円筒形のベンチレーターを追加した改造車で、1931年に約15両ほどソ連に輸出された「イングリッシュ・ワークマン」と呼ばれたタイプの車輌だ。記録は残っていないが、もしかすると、これらが実戦を経験した数少ないタイプかも知れない。

生産期間が長かったこともあり、Medium Mk.II には派生型も多い。WoT のイギリス自走砲 Tier IV のBirch Gun もそのひとつで、機械化が進む陸軍にあって、自走砲の効果を実証するために、1926年から試作された車輌であった。しかしMk.II の車体にQF18ポンド砲を搭載した試作自走砲は軍の関心を集めるには至らず、1929年に開発中止となっている。

解説文:ウォーゲーミングジャパン ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx

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スクリーンショット

Medium Mk.II スクリーンショット Medium Mk.II スクリーンショット Medium Mk.II スクリーンショット

 

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