今人気のイラストレーター、漫画家の方に、World of Tanksに登場する車輌の中からお気に入りの一輌を選んで描いていただき、素敵なイラストと車輌解説でご紹介をする連載イラストコラム企画の第二弾 「My Favorite Tanks」 。
第09回は、緻密な描き込みと迫力ある描写が特徴のイラストレーターのsdkfz 先生に、ティーガーII 戦車の後継戦車として計画されたものの、実際に生産されることはなかったドイツツリーのTier IX 重戦車 「E 75」のイラストを描いていただきました!
ティーガーII の流れを汲む重厚感あふれるフォルムにも注目です。お楽しみ下さい!
こういうペーパープランに終わった車両には興味が尽きません。
限りなく現実味を帯びたものから空想に近いものまで。
ティーガーIIの強化版、"ティーガーIII" ともいうべきE 75ですが、楔のように鋭角な前面装甲と、張り出したステレオレンジファインダーが面白いです。ゲーム内で暴れているのを見て一目で気に入りました。
必殺の電撃戦でソ連を粉砕できなかったドイツ陸軍では、戦争の長期化に備え、前線や生産現場で得られた経験をもとに、ゼロから新型戦車を開発するための部署が創設された。これがいわゆる「Eシリーズ」と呼ばれる新型戦車群の始まりである。Eとは、ドイツ語で「開発」を意味するEntwickelnに由来する。
E シリーズの狙いずばり、抜本的に新しい戦車を作り出すことにあった。単なるスペックを追うのではない。前線と生産現場の要求を最大限反映すること。生産技術面 での過去の遺産を切り捨てて、最大限の生産効率を追求すること。こうした哲学のもとで新世代の戦車を開発することが、E計画のねらいであった。ダイムラー・ベンツやヘンシェル、ポルシェといった、主要戦 車メーカーを外して、主に航空機生産や部品開発、協力生産に携わっていたメーカーを試作企業に選定していたのは、既存の戦車生産に負担をかけない配慮と同 時に、過去の遺産との決別という意味があった。
ひとつは車体の上下振動を加納な限り車輪周辺で解消すること。鍵となるテクノロジーが、2個をペアにした転輪に設置された強力なスプリングユニット付きの 走行転輪だ。性能ではまったく不満がないトーションバーを諦めることになるが、車内容積をかなり節約できるうえに、車体底面に脱出ハッチが付けられるメリットは大きい。
ひとつは車体の上下振動を加納な限り車輪周辺で解消すること。鍵となるテクノロジーが、2個をペアにした転輪に設置された強力なスプリングユニット付きの走行転輪だ。性能ではまったく不満がないトーションバーを諦めることになるが、車内容積をかなり節約できるうえに、車体底面に脱出ハッチが付けられるようになるメリットは大きい。
もうひとつは、エンジンと駆動系を車体の前後に分けず、変速器、装甲駆動装置、最終減速装置を車体後部のエンジンルーム内にコンパクトにまとめること。こうすれば車体を貫くパワートレインを省略できて、車内スペースを大きく確保できる。今日のパワーパック方式に近い考え方だ。
この二点を追求しつつ、これまで雑多で散漫に拡大してきた戦車製造ラインを、1944年から45年から以下の五種に収斂し、戦車生産力を劇的に改善するというのがEシリーズ計画の最終目標である。
このうち、E 75とE 50は脚周りや履帯など各種部品、車体構造など、共通するところが非常に多かった。砲塔リングのサイズも同じなので、主砲は異なっていても、相互に換装できた。違いといえば、E75はE50より装甲は強力なぶん車内容積が小さくなることと、転輪のスプリングユニットが、E50は片面に3基6輪、 E75は4基8輪になっていることくらいだ。
結論からいえば、Eシリーズは実現しなかった。戦局がそれを許さず、また担当メーカーにも試作車輌を作りきる余力も資材もなかった。E 25とE 100で若干の試作が進んでいただけで、E 75は青写真のみで終わってしまっている。また理想が先行しすぎていて、実際に製造段階で発生するトラブルについては、検証さえできていなかった。これは主要メーカーを開発から外していた弊害であったかもしれない。エンジンも計画より大型になったため、開発が進めば従来型と同じようにトランスミッションを車体前部に移さなければならなかっただろう。
しかしEシリーズが追求した技術は、戦後の戦車開発で実際に起こることを先取りしている。その点ではいかにもドイツの最新戦車にふさわしい性質を帯びていたといえるだろう。
解説文:ウォーゲーミングジャパン ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx
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