今人気のイラストレーター、漫画家の方に、World of Tanksに登場する車輌の中からお気に入りの一輌を選んで描いていただき、素敵なイラストと車輌解説でご紹介をする連載イラストコラム企画の第二弾 「My Favorite Tanks」 。
第05回は、前回の日本戦車イラストコラムから引き続き、緻密なディティール描写が特徴の伊能高史先生に、フランスツリーのTier III 駆逐戦車 「ルノー UE 57 (Renault UE 57)」が、動物と一緒に湖畔に佇む素敵な情景イラストを描いていただきました!
どことなくヨーロッパの風景を想像させる、のどかなイラストをお楽しみ下さい!
実のところWorld of Tanksをプレイするまで戦車の知識はまるでありませんでした。
ゲームユニットとしての個性付け、という面も勿論あるのでしょうが、こんなにもバラエティに富んでいる世界だとはゲームを始めるまで想像だにしてなかったのです。
ゲームにも慣れてきた頃、ようやく大まかですが戦車の区別もつくようになってきました。
ルノー UE 57を初めて見た時はあまりの小ささに何の冗談だと思ったものです。
KV-1やチャーチル等と並ぶとその小ささがより際立ちます。逆に言えばそれまで意識することなく普通に見ていた戦車というものが「いかに大きな乗り物か」と認識させられた、ということでもありました。
それでもその小ささに本当に4人も搭乗できるのかと思わずにはいられません。
市街地マップなどに配置されてる車よりも小さいのです。
実際の写真を見てみるとやっぱり小さいです。
戦車の中央にある2つの半球状のドームは車長と操縦手の頭部を守るもの、つまり目いっぱい乗り込んでも頭が出てしまう車高しかありません。砲手と装填手は後部スペースに乗っかるだけ。怖ろしい…。
元々の用途は物資の牽引、運搬などらしく戦車砲を搭載したルノーUE57は試作車のみだったそうですが、実戦配備されていたらどうなっていたんでしょうか。
それでも重量は2.79トンで一般的な車の倍近い重さです。この辺はさすが戦車といったところですね。
ちなみに世界最大の戦車マウスの重量は188トンだそうで、砲塔部分だけでも55トンもの重さがあるそうです。
第一次世界大戦が終わり、列強各国では緊縮予算により軍縮が始まったが、反面、機械力が主役になった戦争のあとだけに、軍の近代化に手は抜けなかった。そんな低予算のなかでの機械化という難問を解決したのがタンケッテ(豆戦車)であった。1920年代から30年代にかけて、タンケッテはヨーロッパの陸軍でもてはやされたが、フランスは当初は無関心であった。彼らは優に千を超えるルノーFT軽戦車を保有していたからだ。
しかし無数の若者が命を散らした塹壕戦のトラウマはフランス軍に根強く、1920年代後半には現有の戦車の他に、装軌式の小型車輌が必要という議論が高まった。塹壕を越えて前進する歩兵部隊に補給を届けるのには、タンケッテのような車輌が不可欠とされたからだ。こうして1930年より各メーカーで試作開発が行われ、翌年、陸軍は「UE型歩兵補給用小型装甲装軌車」としてルノー案を採用した。38馬力のルノー10CVエンジンを搭載したUE装軌装甲車は、路上であれば時速30kmが出せて、100kmの航続距離があった。2人乗りの乗員室は最大9mmの装甲で覆われ、後部の積載スペースは車内から開閉、傾斜操作ができた。砲弾孔だらけの戦場を自走して、機銃弾の雨の中で安全に補給作業ができる、供給通りの軽装軌車であった。イギリスのベストセラー車であるユニバーサル・キャリアに強く影響されているものの、上面を装甲判で覆い、乗員の頭部はボール型の装甲ハッチで守るなど実戦向きの設計になっている。当然、機関銃を搭載して軽戦車として運用する案も浮上したが、「機甲科の装備として流用される可能性がある」という、歩兵科のセクショナリズムむき出しの反対で実現しなかった。
第二次大戦が始まり、フランスがドイツに敗れるまでに、ルノーUE装甲装軌車は、能力向上型のUE2とあわせて5000輛以上製造されていた。しかし前線に配備されていたのは3300輛程度で、後方に1200輛以上残されていた。以後、3000輛以上のUE装甲装軌車がドイツ軍に使用され、電撃戦の一翼を担ったのは皮肉に過ぎる。一方で、海外に運び出されたごく少数が自由フランス軍の装備となり、彼らの貴重な機動戦力を担った。当初より対戦車能力の不足を嘆いていた同軍では、1943年5月より、UE装甲装軌車を使ってイギリス軍の6pdr砲(口径57mm)Mk.IVを搭載した対戦車車輌を開発した。これがルノーUE57対戦車自走砲だ。
とはいっても車体後部の貨物スペースに6pdr砲を乗せただけの車輌に過ぎない。車上には戦闘スペースと呼べる部位はなく、砲は車外から操作しなければならなかった。確かに6pdr砲に機動力を持たせることはできたが、これではシルエットが高いだけの対戦車砲となってしまい、牽引砲に比べてメリットはなかった。さすがにこの欠点はどうにも埋め合わせできず、また6pdr砲自体が威力不足になってきたこともあり、結局、試作車が1輛だけ作られただけで計画は破棄されたのであった。
解説文:ウォーゲーミングジャパン ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx
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