今人気のイラストレーター、漫画家の方に、World of Tanksに登場する車輌の中からお気に入りの一輌を選んで描いていただき、素敵なイラストと車輌解説でご紹介をする連載イラストコラム企画の第二弾 「My Favorite Tanks」 。
第03回は、あのバウアー中尉殿と、World of Tanks の夢のコラボレーションが実現!?
細かなミリタリー描写と可愛らしいキャラクターで人気のイラストレーター EXCEL先生に、やはりEXCEL先生と言えばこの車輌?ドイツツリーのTier VII 中戦車 「パンター (Panther)」から、パンターの事実上の完成形と言える後期型のパンターG型を描いていただきました!
お楽しみ下さい!
パンター戦車は避弾経始のついた大柄な車体構成なので、なんとなくのっぺりした外観という印象を抱きがちだったり、タイガー戦車ほどのヒーロー性が無いせいか存在の割には地味な印象があります。
しかし調べてみると、ツィタデレ作戦への"決戦兵器"として準備されたという登場経緯や、ダブルトーションバー装備のサスペンションなど、いわゆる"ステレオタイプとしてのドイツ"的な凝ったメカニズムに加えて開発時のDB案設計、MAN案設計の政治的な争いなど、当時の組織の縮図のような印象があり、色々な切り口の魅力を持っていると思います。
イラストに関してですが、私は戦車に関してはエンジングリルやゲベックカステンなど、ディティールの集中する後部がどちらかと言うと好き(特に前面のディティールが少ないパンターは尚更)なので、背面方向からのカットを描いてみました。
ガスタービンエンジン装備型などの尖ったモデルもいつか描いてみたいところです。
第二次世界大戦において屈指の中戦車とも呼ばれるパンター戦車シリーズ。しかし、その登場はドイツ軍が置かれていた戦略的状況の変化——ありていに言えば、苦境を示している。
大戦前半の1942年中頃までのドイツ戦車は、どのカテゴリーにおいても小型、軽量なのが特徴であった。主力のIII号戦車、IV号戦車は、戦車戦では不満が残るものの、敵の戦線を突破して、戦果を拡張する用途にはマッチしていた。しかし攻勢が行き詰まり、防御戦闘が多くなると、機動力を犠牲にして、火力と重装甲に頼らねばならなくなる。これが1943年7月のクルスク戦で姿を見せたパンターD型戦車の大前提だ。
もっとも、開発を急ぎすぎて試験工程を省略したD型は、肝心の戦場で不具合を連発してしまう。2割にも満たなかった初期の稼働率こそ、A型の登場で改善したが、通常の開発手順を踏んでいればA型は開発不要のサブタイプであったはずだ。
やがて1944年にかけて兵器生産力で連合軍に逆転されたドイツ軍は、軍需産業の構造にメスを入れて、工程を簡素化するなどして生産性向上に動き出した。この中で、すでに開発中だったパンターの新型車輌に、計画案だけ先行していたパンターII 中戦車のアイデアを取り入れて完成させたのがパンターG型である。1944年3月に量産が始まり、晩夏までには戦力化した。
パンターG型の車体正面装甲は80mmの圧延均質鋼鈑が使われ、55度の傾斜を考慮すると145mmの厚さに相当する防御力があった。半円型防盾の厚さも100mmもあり、当時の連合軍主力中戦車では、正面からパンターG型を撃破するのは極めて困難であった。砲塔下部に命中した跳弾が車体上面を突き破ってしまうというA型までの欠点も、アゴ付き防盾を採用することで解消している。
反面、車体側面の装甲は避弾径始を考慮しても50mm程度しかなく、76mm砲搭載のM4シャーマンにも簡単に貫通されてしまうほどであった。さらに車体側面のバッスルが砲弾庫になっていたこともあり、この部位からの貫通弾は致命的な損害を導いた。また装甲材質自体が、レアメタルの調達不足などもあって最大2割程度もカタログ値より劣化していたというデータもある。
攻撃力では、まず主砲の威力は文句の付けようがない。7.5cm戦車砲KwK.42 L/70とPzgr.39/42の組み合わせは距離500mで168mmもの貫通力を発揮したが、これでM4シャーマンやT-34を撃つなど、牛刀で鴨を裂くようなものだ。
また強力なエンジンや幅広の履帯により、車体の大きさの割には良好な機動力を発揮できた。しかしこれはあくまでカタログ上の数字で、パンター自体が25トン程度の戦車を想定していた駆動系をいじくり回しただけであったので、戦闘重量で45トンに迫るG型は常に足回りの弱さに泣かされた。「豹」は、プレデター系アニマルで最速の脚を持つがゆえに、脚の故障は命に関わる。この点、はじめから脚周りが弱点だらけのパンターシリーズは、ずいぶん似つかわしくない名前を戴いたことになるが、どちらも脚が致命的な部位であったのは奇妙な一致だ。
このように、基本は頑丈な車体及び砲塔正面を敵に向けて、アウトレンジからの撃破を考えて設計された戦車なので、WoTで簡単に撃破されてしまう場合、戦い方を考え直す必要があるかも知れない。実際、パンターG型が登場するころには、ベテラン戦車兵は払底していたので、側面に回り込まれてあっけなく撃破された様子の写真もけっこう残っている。G型は戦場で活躍した戦車ではなかったのだ。
それでもパンターの開発を進めると、小型砲塔(シュマルトゥルム)搭載のF型や、KwK.45 L/100というモンスター級の長砲身まで搭載できるようになる。パンター戦車が評判先行の見かけ倒しであったのか、それとも最強中戦車の一角を占める存在であったのか、最終開発まで進めて確認するのも楽しそうだ。
解説文:ウォーゲーミングジャパン ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx
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