イラストで知る日本戦車 第10回 Type 3 Chi-Nu / 小林源文

Type 3 Chi-Nu
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日本の戦車にスポットを当てて、ご紹介をするイラストコラム 「イラストで知る日本戦車」 。第10回は本格的な対戦車戦闘を意識して開発されるも、本土決戦用として温存され実戦投入されることがなかった「三式中戦車チヌ」の迫力ある戦闘シーンを小林源文先生に描いて頂きました!

 


三式中戦車チヌ

車両の解説

戦前に開発された日本の戦車は、戦車用ディーゼルエンジンの開発成功など、世界的にも先駆的、先進的な技術が盛り込まれ、評価も高かった。

しかし九七式中戦車チハのように、もともとが歩兵支援を主任務としていたために攻撃力が低かった。
とりわけ対戦車攻撃力が貧弱であったことが、チハ改の生産を急遽必要とするなどの混乱を招くなど、ただでさえ乏しい生産力を圧迫してしまっている。
そうした開発の遅れを挽回し、一気に連合軍戦車にキャッチアップすべく開発されたのが三式中戦車チヌである。

茨城県土浦の自衛隊兵器学校に参考展示してある三式中戦車を目にする機会があれば、巨大な砲塔と長砲身の75mm砲(三式戦車砲)が生み出す威圧感に驚かされるだろう。この砲塔には全70発の砲弾のうち、実に40発が格納されることからも、戦車戦を強く意識した車両であったことがわかる。

ところが砲塔を含め、主要部の装甲厚は一式中戦車とほとんど変わらない。
車体はチヘ車からの流用であるため仕方がないにしても、これだけ大型化した砲塔の装甲が薄いままなというのはかなり心もとない。

また戦車兵として従軍した経歴がある司馬遼太郎氏は、三式中戦車にヤスリを当てたところ、簡単に削れるほどの材質であったということを、戦争末期の日本陸軍の行き詰まりを象徴するエピソードとして残している。

もっとも戦車の装甲はすべてが浸炭鋼鈑(装甲の表面に特殊焼入れをして硬度を高めたもので、ヤスリでは削れない)というわけではない。
この場合、戦車小隊長にまでなった司馬氏をして、装甲に関する基礎知識が身についていない陸軍の教育がむしろ問題であろう。

三式中戦車は終戦までに三菱重工で60台が完成し(諸説あり)、本土決戦用とされた。
そのため実戦経験はなく、日本陸軍が実用量産に成功した最後の戦車となった。戦後、アメリカ軍撤収時に1台が自衛隊に引き渡された。
これが現在、土浦に残る世界唯一の現存車両である。

解説文:ウォーゲーミングジャパン ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx

 ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx の活動は Facebook ページでも配信中!

 

Type 3 Chi-Nu

 

小林源文先生のコメント

本土決戦の三式中戦車は、うちの番頭関村に聞いたら背景は千葉のあたりがいいとか。私の本土決戦のイメージは、やはり帝都決戦が雰囲気的に一番よろしいかなと思います。

そのためには試作機で終わった震電が飛び回る空と、建軍の父大村益次郎の靖国という舞台設定が望ましいと思って勝手なイメージで作画を始めました。もう仮想戦記の世界観ですな。
作画イメージの責任は総てバチ当たりな私にありますので悪しからず。

私見ですが当時は軍隊を皇軍と呼んでおり、皇軍は名称からして天皇の軍隊であり日本国民の軍隊ではないですね。

しかし、この時期になっても米軍は部隊記号Rと偽装記号で、戦勝国の余裕なんでしょうかね?日本は統制経済に失敗しておりますが、統制経済の成功したアメリカは戦時中も娯楽映画を撮ったりして、スペインの市民戦争を扱ったゲーリー・クーパー主演の『誰が為に鐘は鳴る』は有名です。日本がもし統制経済に成功したって、国力の差で勝てるわけがありません。

こんな当たり前のこと書いても退屈なので・・・・・戦車の話に戻しましょう。

日本戦車も、チハ車の進化系で三台目の三式戦車でやっとチハのキャタピラの形状が理解できました。
チハ車のキャタピラに前期型と後期型があるんですね。
ドイツ戦車に慣れた目には、日本戦車のキャタの波型の形状は書き辛いものがあります。
ついでに言わせてもらうと、キャタピラを描かなければ戦車は好きなんですが、同じ繰り返しは非常にツライ!! 転輪も辛い!

転輪のボルトやグリースニップルのついた軸受けの頭部、転輪のゴムの質感や明暗、連続した楕円の構造、ボルトや尖頭鋲の数を数えながら描くのはマゾっ気たっぷりですな。
キャタも角度によって形状の見え方が異なるし、スプロケット(起動輪)の歯は擦れるとこには金属色を入れないといけないし。
キャタピラを描くのは拷問のごとく苦痛で面倒で、描いている。

同じ絵を何日も見ていると飽きて、なおさら筆が(ワコムタブレットのペンですが)進みません。
この期間中は絵描きになるんじゃなかったと後悔しきりです。・・・・・・リアリズムは辛いw
キャタピラを描かないで済むなら戦車は好きだと昨晩電話で話していたら、それ戦車じゃないでしょうと言われた。
ア~~~~ごもっともです。

しかし三式戦車は砲塔がデカくて重そうで、車体が目いっぱいで下がってるように見えますね。
で次の四式では車体が延長されてるわけですね。・・・・わかります。

前回のチハ改のイラストではコントラストや明度をイジリ過ぎて、とんでもない色相や彩度になってしまい直しに手間取って大変な思いをしました。今回の三式では反省してコントラスト調整はやめて素直に描いています。

ちなみにパソコンソフトはかなり古いぺインター5で、パソコンはG4と年代物です。
筆による手書きに戻したいのですが、筆の感覚を取り戻すのに一か月以上はかかりそうで、このままパソ絵で通そうかと思ってます。

そうそう、某方面から備品リストにない余り物のMac G5を頂きまして、これを使えるようにセットアップしています。
これも年台物ですが1951年型の私にはピッタリかも知れません。
デジタルは便利ですが、どうも手書きのようなオリジナル性との縁が薄く感じますね。

あとね、昨晩Wargaming Japanの担当者と電話で話した後にパソコンを起動して、イラストの続きを描こうとしたら前に描き足した部分が消えていた。
寝る前に一度フリーズしたので、このせいの様です。

G5を使えるようにしたら、次のSTB-1は正面からなので少しは楽かな?

 


スクリーンショット

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