ミリタリー描写に深い造詣を持ち、人気のイラストレーター しばふ先生にゲーム内に登場する様々な戦車と魅力的なキャラクターを描いていただく連載イラストコラム企画の第三弾 『 戦場の華 feat.しばふ 』 。
連載第08回となる今回は、特徴的な巨大な砲塔と強力な152mm 榴弾砲を持ち、『街道上の怪物』のエピソードでも有名なソ連ツリーの重戦車 『KV-2』 のイラストで描いていただきました。
もちろん今回もデスクトップ用の壁紙もご用意。ダウンロードしてお使いのデスクトップを素敵なイラストで飾りましょう!
ソ連のKV-1重戦車は、第2次世界大戦の前半期、つまり1942年夏にティーガー重戦車が実戦投入された時点で、唯一、戦力化に成功した重戦車であった。自信満々でソ連に攻め込んだドイツ軍の戦車部隊に立ちはだかったKV-1は「ドイツ戦車のあらゆる砲弾に耐え、あらゆるドイツ戦車を貫通する」無類の重装甲と強力な火力で敵の度肝を抜き、ドイツ将兵からは「ギガント(巨人)」と恐れられた。
これより先、試作段階でフィンランドとの冬戦争に投入されていたKV-1重戦車について、良好な戦績を見たソ連軍上層部は、このKV戦車を火力支援する大口径榴弾砲を搭載する「大型砲塔搭載KV」の開発を決める。これがKV-2重戦車である。
なにより強力な火力が求められたKV-2には、当初、203mm砲が検討されたが、重量過多であったため、152mm 榴弾砲M-10が選ばれた。これは重量50kgを超える榴弾、徹甲榴弾、榴散弾と、40kgのコンクリート破壊用徹甲弾を使用可能で、徹甲榴弾を使った場合は距離1500mで72mmの装甲を貫通する力があった。これだけの巨砲を全周砲塔に収容できたのはすごいことだ。
しかし砲弾は分離装薬式(弾頭と装薬を別々に装填する仕組み)となったために装填手が2人必要で、大人の背丈ほどもある巨大な砲塔は重量のバランスが悪く、車体がわずかでも傾斜しただけで旋回しなくなるという、兵器として重大な問題を抱えていた。
また、巨砲搭載戦車のパイオニアとも言えるKV-2であるが、KV-1でさえトランスミッションの能力不足に悩まされていたのに、更に5トンも重くなったKV-2の機動力は劣悪で、敵要塞を狙った据物斬りでは無敵だが、機動戦主体のドイツ軍に翻弄され、足回りの故障続出で大半が失われた。
結果、独ソ戦がはじまって間もなくKV-2の生産が停止して、生産数は334両で打ち切られた。「街道上の怪物」など有名なエピソードがあり、インパクトは抜群であるものの、KV-2は兵器としては失敗作であった。
しかし威力抜群の152mm主砲は用兵側を魅了し続け、SU-152やISU-152のような巨砲搭載車両が誕生したのである。
解説文:ウォーゲーミングジャパン ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx
ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx の活動は Facebook ページでも配信中!
お使いのデスクトップの画面サイズにあった壁紙をダウンロードしてご利用ください。