ミリタリー描写に深い造詣を持ち、人気のイラストレーター しばふ先生にゲーム内に登場する様々な戦車と魅力的なキャラクターを描いていただく連載イラストコラム企画の第三弾 『 戦場の華 feat.しばふ 』 。
連載第05回となる今回は、アメリカツリーから 2重構造の履帯と、正面からの迫力あるフォルムが特徴的な怪物駆逐戦車、T95 (T28) のイラストを描いて頂きました!要塞突破用という特殊なコンセプトのこの車両ですが、今回のイラストの背景もそれにちなんで、ゲームでもお馴染みのあのマップ・・・?
もちろん今回もデスクトップ用の壁紙もご用意。ダウンロードしてお使いのデスクトップを素敵なイラストで飾りましょう!
第二次世界大戦時、ヨーロッパへの本格的反抗に備えて重戦車開発に着手したアメリカ陸軍は、M26パーシングや、T29重戦車を生んだが、同時に堅牢な陣地や要塞を突破するための特殊車両開発も必要としていた。
これを受けて1944年3月に仕様がまとめられたのが、4人乗りで車体が極端に低く、砲塔を廃止して得た分厚い正面装甲の車体に強力な105mmT5E1砲を据え付けたT28重戦車であった。これが翌年2月には砲塔を搭載していない特殊な車輌であることを理由に、T95戦車駆逐車(GMC)に改名されたのである。
ところで工業大国のアメリカでも戦時増産で主だった戦車向上はフル稼働であったために、T95の開発はパシフィック・カー・アンド・ファウンドリー社(現在のパッカー社)に委託された。しかし結局、試作車輌がアバディーン射撃試験場に送られたのは太平洋戦争も終わった1945年12月であり、実戦には間に合わなかった。
T95のエンジンはM26パーシングと同じフォードGAF V8ガソリンエンジンであったが、車体重量が倍の95トンもあったために、速度は時速13kmまで低下した。これでは戦車戦で使い物にならないのは明白だが、そもそもが12インチ(305mm)もの車体正面装甲を与えられた要塞破壊用のモンスターなので、計画段階における速度性能は問題視されなかったのだ。
T95の問題はむしろ書類上の扱いにある。アメリカ軍の兵器体系から見た場合、T95は規格外の装備品であった。アメリカ軍では、戦車とは砲塔を持つ車輌であり、戦車駆逐車は軽装甲を旨とする。したがってT95はどちらにも当てはまらず中に浮いた存在となり、結局「重装甲・重火力の戦車」であるとして、1946年6月にT28超重戦車と命名されたものの、引き取り手も無く、試作で終わってしまったのだ
いずれにしても、用兵上は車体の接地圧を下げる必要から、通常の履帯の外に転輪をもう一組張り出し、100mm厚のサイドスカート付き履帯を装着して接地面積を倍に増やしていた。そして輸送時や路面走行時は外側の履帯および転輪部を外して牽引する構造としたのだ。
ちなみに仕様上、World of Tanksのゲーム内ではT28とT95を別の戦車としているが、史実では同じ車輌のことを指している。
解説文:ウォーゲーミングジャパン ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx
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