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日本の戦車にスポットを当てて、ご紹介をするイラストコラム 「イラストで知る日本戦車」 。第05回はsdkfz先生に、九五式軽戦車ハ号の後継車輌として開発されたものの、生産数も少なく実戦に投入されることがなかった 「九八式軽戦車ケニ」を緻密なイラストで描いていただきました!
傑作戦車である九五式軽戦車ハ号の開発を終えた日本陸軍では、1938年に後継軽戦車の開発に着手した。開発コンセプトは九五式の強化と性能の向上である。
まず車体から見ると、以下の表のとおり、あらゆる面で小型化されていることがわかる。
全長 | 全高 | 重量 | |
---|---|---|---|
九五式軽戦車 ハ号 | 4m30cm | 2m21cm | 6.5t |
九八式軽戦車 ケニ | 4m11cm | 1m82cm | 6.2t |
このように車体がはっきりと小型化していながら、主要装甲は最大4mmほど増加していることから、機動力と防御力はっきりと向上していることがわかる。また、円錐状の砲塔は見た目も斬新だ。
攻撃力強化としては、新たに一〇〇式三十七粍戦車砲を搭載した。これは九五式軽戦車に載せられた九八式三十七粍戦車砲の初速を約15m/sほど増し、車載重機関銃と同軸にした戦車砲である。
こうした新設計の車体を支えるエンジンは、戦車用に初採用された一〇〇式統制型のV6ディーゼルであり、130hpのエンジンパワーによって、九八式軽戦車は最大時速50kmを発揮できた。足回りは大型転輪4個から中型転輪6個となり、前後で2個ずつのペア配置とされた(大型転輪4個を採用したケニBと呼ばれる試作車もある)。また弱点となるコイルスプリングは車体に内蔵されたので、防御力も良くなっている。このような足回りの改良によって、単純に九五式軽戦車を時速で10kmほど上回るだけでなく、機動性そのものが良好になっているのは見逃せない。また砲塔上のキューポラと車体前面機銃を廃止したことも改善点である。
しかし実績抜群の九五式軽戦車を全面的に置き換えるほどのパンチには欠けたために、本格的な生産は1942年まで延期された。結局、生産数は最大113台しかなく、配備も国内に限定されていたので実戦記録はない。このようにインパクトは薄いが、技術面では優れた軽戦車であるため、その実力はWoTで確認してほしい。
解説文:ウォーゲーミングジャパン ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx
ミリタリーアドバイザー 宮永忠将 / Phalanx の活動は Facebook ページでも配信中!
WoTにはマイナーな車輛がたくさん登場するのでとても勉強になります。
見慣れない車輛、目を疑うような奇怪な車輛が、戦場を縦横に駆ける様は見ているだけで興奮します。
この九八式軽戦車ケニもそのひとつです。資料がほとんど無く、一部推定、またはWoT内のモデルに準拠して描きました。
後方の車輛は大型転輪を装備した「ケニB」と呼ばれるタイプです。