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チーフテンズハッチ: M4A2E4

World of Tanks の戦場で稀にM4A2E4という車両を見かけるかもしれない。M4であることは間違いないのだが、見ての通り、かなり変わったサスペンションを持っている。

他の多くの国のようにアメリカは様々な種類のサスペンションの実験や評価を行ってきた。サスペンションの方式は一長一短でどれか一つに絞れた国はなかった。M4E4はアメリカ初のトーションバー(ねじり棒バネ)式の車両というわけではないが、他のサスペンション方式との比較する際の基準となった。独立バネ式トーションバーを利用したM4シリーズのサスペンションの開発は造兵技術委員会が1943年の4月と5月に許可を出した。

ゼネラルモーターズ社(GM)は試作車2台を製作した。1台目は1943年7月22日に、2台目は1943年8月15日にそれぞれ完成した。この2台には7インチの可動域を持つ26インチ径のホイールが装着された。

GMでは陸軍に引き渡す前に2台合計3,500マイルの走行試験などを実施し、軸や履帯の故障頻発に苦しんだ。結果、フォードとGMCから追加で別の種類の履帯が調達することになった。この履帯はT35E1とT26E1からの流用であったので、耐久性試験は行われなかった。

ついで2台の車両は別の試験場へ送られる。1台はゼネラルモーターズ車両性能試験場で200マイルの試験を行った後に、機構委員会での評価のためにフォートノックスへ送られた。もう1台は戦車工廠の性能試験場に送られ、試験の結果スプリングの耐荷重の増加とバンプスプリング(?)の改良が必要だと判断された。改良のたミシガン州グランドブラン市のフィッシャー戦車工場、アバディーン性能試験場と、各地を転々としている。戦車工廠では優先順位が高い別の試験が行われていたからだ。

M4のボギー式サスペンションとM4E4との比較は非常に難しかった。M4型のサスペンションは方形状の車体から完全に脱着ができる。一方のM4E4型はサスペンションが一部車体に組み込まれていて、複雑な構造をしていたため、どこまでが車体でどこまでがサスペンションかを判断することが難しかった。結果的にホイール単体を比較すると重いが、M4E4のサスペンションはM4ボギー式と大体同じだとされた。

1944年7月27日に車両がアバディーンに到着すると、まず点検から始まった。そこで1/2インチ径のブラケットが湾曲し、同軸機銃の制御スイッチが紛失しただけでなく、車載機銃のスプリングもないことがわかった。更に酷いことに砲安定装置の抵抗器の交換まで必要となった。これらのトラブルはアバディーンでのサスペンション試験における重要事項となった。
まず行われたのは牽引抵抗で、M4A4とM4E8と比較試験は次のような結果となった:

結果:   
M4E4: 75lb/ton at 25mph. 45lb/ton at 3mph
M4E8: 104lb/ton at 25mph. 65lb/ton at 2mph
M4A4: 100lb/ton at 12mph. 62lb/ton at 4mph.

さらに同じトーションバー式サスペンションを持つT20E3中戦車との比較も実施された。

概して言うと硬表面コースでの振動調査の結果M4E4は他の車両と比べて劣っていることがわかった。調査された車両の中でT20E3の結果が一番良かった。結果はM4E4の約3トン重い車重から来る幅の広い履帯とトーションバー・スプリングの硬さによって説明される。

トーションバー式の車両はペリーメンのクロスカントリーコースでは良い結果を披露した。これは急激に底をつくことが無いトーションバーの特性により車体に大きな衝撃が伝わらないことが理由だと考えられた。しかしベルギー・ブロック(石畳)・コースでは古いVVSS(垂直懸架サスペンション)が使われていた車両はその他車両よりも5mphと20mphの両試験で高い角安定性を表した。HVSS(水平懸架サスペンション)車両とトーションバー車両はどちらも波状の縦揺れに悩まされた。
未舗装のでこぼこ道における時速5マイルでの走行試験では、ボギー式と独立サスペンション式の違いが顕になった。M4A1とM4E8は車両全体が上下するものの車体は水平を保っていたが、T20E3とM4E4はあまり動かない車両前部に対して車両後部の振動が激しくて水平を保たないので、砲撃プラットホームとしての安定性に難ありとされた。時速20マイルまで速度上げると、後者の独特の振動は消えて車体の姿勢は安定した。評価試験官はスタビライザーを利用すれば車両の振動を最低限に抑えるのか、あるいは完全に消し去ることができると意見を述べた。彼はトーションバー式サスペンションを使った場合の牽引摩擦の少なさに魅力を感じていたのだ。

結果は以下の通りとなった。

結論
a.    トーションバー型の独立スプリング式サスペンションは満足な乗り心地をもたらす実用的な手段だ
b.   M4E4中戦車は垂直・水平どちらの懸架サスペンションのM4中戦車と比べても優れた運転特性を持っている
c.    このような動きの自由度の高いサスペンションには高性能の緩衝装置と高性能の補助バンプスプリングが必要
d.     M4E4中戦車の生産が行われた場合中戦車M4の兵器としての性能はあまり変わらないが、メンテナンス性はかなり悪化する

以下を推薦
a.    トーションバー・スプリングを利用した独立スプリング式サスペンションは原理的には無限軌道の軍用車両への応用への条件を満た
している。

b.    M4E4中戦車は標準化・量産化するべきではない。

この結果を見て言えることが何点かある。

最初に戦車は複数のパーツを統合して成り立つ兵器だということだ。バラバラに選ばれた最高のサスペンションと最強の主砲と最強のエンジンを組み合わせれば良いわけではないということで、トーションバー式サスペンションの動きや乗り心地がよくても重要な判断基準である安定した射撃の土台としては劣っていたということだ。しかし追加の部品(スタビライザー)ので長所を保持したまま問題が軽減されるとされた。結果アメリカは以後ボギー式ではなく独立式サスペンションに移行することを決断した。しかし同時期にイギリスは独立式からボギー式に移行した。おそらくはアメリカと同じような実験を行ったのだろうが、違う優先順位から違う結論に至ったのであろう。角安定性が重要だったのか、もしくはメンテナンス性を重視したのかもしれない。

次に言えることは実験された3つのサスペンションの中でE4型は一番良いとされたが、他2つを置き換えて生産されるべきではないという点だ。第二次世界大戦(それ以外の戦争にも言えることだが)の現実として「完璧」を目指すことが「十分良い」の敵だということだ。「これが一番良い」という結論に至ったら即座に生産を切り替えるだろう、と思う人もいるかもしれないが、25%の牽引抵抗軽減と15mph以上で不整地を移動した時の多少の乗り心地の改善に生産施設の転換や現場で3種類目のサスペンションを導入する手間が見合うだろうか。

現実的に見て、答えは否だ。

結局M4E4は興味深い検証ではあったが、それだけのことだった。


*また皮肉なことに次に量産されたM26にはスタビライザーは装備されなかった。

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