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チーフテンズハッチ - ファイアフライ:Part 1

 

アメリカ軍が愚かだったからM4に乗せる17ポンド砲を買わなかったとか、イギリスやカナダの生産側が乗り気じゃなかったなどの様々な話が出回っているが、話の根拠とされるものは非科学的であったり本物かどうか疑わしいものが多いです。75mm砲の後継となる戦車砲探しに関する公正で客観的な検証を見つけ出すのは割と困難だ。今件に関してよく引用される試験は1944年の夏にヨーロッパで行われたものだ(参照:US Guns German Armor Part 1 ※ NAサーバーの英語の記事となります)。しかし、この試験は「このパンター戦車に何発か弾を撃ちこんでみよう」というほぼ貫通力のみの比較で、あまり科学的と入れるものではない。この試験の結果は「17ポンド砲は他の砲と比べて少し良いが、その”少し良い“は実践的には特に意味を成さない」とされた。(要するに、パンターを正面から撃破することにおいては他の砲と比べてもあまりメリットは無かった。)

兵器システムの試験としてはフィールドテストよりも正式なものがあり、それらは性能試験場で行われる。そのような試験の内容を分析すればアメリカ軍がどのような理由でどのような判断を下したのかに少し近づけるかもしれない。また、アメリカ軍の試験が正当なもので合った場合「ファイアフライは戦時中最強のシャーマンだった」という繰り返し耳にする話に別の視点から見ることができる。

アメリカ武器省がファイアフライの砲塔を入手したのは1943-44年の冬のことで、ちょうど配備が始まっていたM36ジャクソンGMCに搭載され、後にT26E1重戦車(M26試作型)に搭載された90mm戦車砲との比較がアバディーン性能試験場で比較試験が行われた。このアメリカ軍兵器課による試験の結果から17ポンド砲は基本的に90mm砲と比べて劣っているとされた。

もちろん、これは完全に公平な比較ではない。90mm砲は駆逐戦車、そして次世代型戦車に搭載される砲だったのに対してファイアフライは現在配備されている戦車として試験が行われた。そのため、アメリカ軍兵器課がシャーマンを改装することがどれだけ良い解決策を知るためにはさらなる試験が必要だった。またこの試験は武器省が独自に行なったものであり現場で利用する人間によるものではない。戦後まもなく陸軍地上軍はこのような試験を行うよう指示を出したが補給の問題(イギリスのからの数百発の弾薬取り寄せの都合などもあり)試験によりフォートノックスで軍と戦車駆逐兵器委員会によって行われ、結果は1946年の8月までまとめられなかった。この時点では既にファイアフライがM4の派生系として有効化どうか、と言うよりはデザイン特性や実用性、兵器としての全体的な完成度を計り将来的な戦車設計に活かそうというものだ。

 

試験に利用された車両は通常の垂直懸架サスペンションのM4A3の車体に輸入されたM4 17ポンド砲Mk.VII砲塔を乗せたもので、厳密にはファイアフライではないが、車体弾薬庫などの問題はこの試験の対象ではなかったのと、5人目の搭乗員として車体機銃手が必要かどうかは検証課題ではなかったので検証には影響がなかった。検証では3つの車両が比較された:ファイアフライはM4(76)M26に比較された。

各車両は21の項目で比較が行われた。(この数値に驚いている方は少し考えてみよう。戦車砲は精度、発射速度、標的に与えるダメージだけで評価できると思いましたか?)報告書は割と長いので今回は一部を取り上げ、残りは何話かに分けてお送りします。

では、早速順番に試験結果を見て行こう。

試験1: 砲弾の装填と扱いやすさ

使用された砲弾、左から順に:76mm高速徹甲弾、榴弾、被帽付徹甲弾、17ポンド 高初速装弾筒付徹甲弾、被帽付徹甲弾、榴弾、低抵抗被帽付徹甲弾、90mm 高速徹甲弾、榴弾、被帽付徹甲弾

テストされた中で17ポンド砲弾は最も長い砲弾ではないが、幅が90mm砲弾と同じぐらいあり、重さではだいたい3種の中間ぐらいだった。榴弾の重量は76mm/17ポンド/90mmの順に22.23/34.2/42.04ポンドで、被帽付徹甲弾では24.8/37.5/43.87、高速弾では18.9/28.41/36.2517ポンド砲弾は米軍の3インチ口径弾の最大重量基準を超えていたが、扱いがそこまで難しくなかったので報告書ではあまり問題視されていなかった。

しかし、砲弾の扱いやすさだけが問題ではなかった。報告書にはこう書かれている:

装填は砲弾の重さや大きさだけでなく、装填手の作業スペースも考慮して考えなければならない。17ポンド砲の砲塔の作業スペースはかなり狭く、装填手は垂直的な動きで砲弾を砲尾環の切り欠き部分に押し込まなければ駐退カバーを乗り越えることができない。M26中戦車では駐退カバーにより制限されること無く作業でき、装填手は砲尾環をもう少し水平的な動きでアクセスできた。[…] 17ポンド砲弾の軽さによるメリットと90mm砲の砲塔の作業スペースによるメリットはだいたい同じもので、両者の装填しやすさはほとんど同じだ。76mm M1A2戦車砲搭載のM4A3中戦車は十分な作業スペースに加えて砲弾の軽さのアドバンテージもあり装填しやすさでは比較された他の2車両よりも優れていた。

17ポンド砲の装填

何人かの装填手を試し、結果は1.1秒(起立、砲弾手元)から3.2秒(直立、砲弾床置き)、また装填速度の平均と一番上手い装填手を特定するために1分間なるべく早く装填をさせる「Mad Minute(狂気の1分)」の試験を行った。装填手は44秒間に8発を発射した。しかし報告書の記述では「もし17ポンド砲が1分間10発発射44秒間に8発の結果から計算)できるとするのなら、これは腕利きの装填手によるもので、平均的な搭乗員なら1分間8発に近いだろう」と書かれている。またシャーマンVCの即用弾薬ラックは砲弾を5発しか入れておくことができず、このような装填速度は通常ありえない。更に2,000ヤード以内の距離で車長と装填手が正しい砲弾を判断できる速度よいも速いとされた。90mm砲は1分間8発(即用弾薬10発)で、M4(76)は即用弾薬6発しか無いが1分間20発とされた。
駐退機カバー、ターレットリング、砲塔背面の壁の間はご覧の通りとても狭苦しい

試験1: 散布

この試験の目的は「500ヤードから2,000ヤードの距離での17ポンド砲の各砲弾の散布をテストし、76mm90mm砲弾の同様の試験結果と比較することだ」。

このテストは6平方フィートのキャンバス地のパネルを500ヤード間隔で設置し、10発ずつ的に向けて発射して行われた。

500ヤードでの低抵抗被帽付徹甲弾

その後1,000ヤードで行われた。

低抵抗被帽付徹甲弾でのテストが完了した後に500ヤードで高初速装弾筒付徹甲弾の試験が行われた。

結果は8発命中、2発パネルの36インチ下を通り「不良」とされた。偏差の計算の都合で外れた2発も命中した8発と同じ平均偏差を持っていたとされた。全体的な偏差はそれぞれ仰角2.35mil4.34mil、平均0.5mil0.92milだった。

その後1,000ヤードでテストを行った。18発発射して結果を取ろうとしたが(同じ照準状態で連続して発射したところ的の上を通り越したもの、左へそれたもの、手前に着弾したものが確認され)、砲弾に関するこれ以上のテストは断念して装甲貫通の試験だけ行おうということになった。

高初速装弾筒付徹甲弾を28発発射した後に低抵抗被帽付徹甲弾のテストに戻ろうとしたところ、高初速装弾筒付徹甲弾が砲身内にジュラルミン付着物を残したことがわかり、分散テストを再開する前に榴弾10発、低抵抗被帽付徹甲弾を10発発射して砲身の汚れを落とした。観測されたグルーピングの結果(下記のフェーズBを確認)更に榴弾と低抵抗被帽付徹甲弾10発ずつ発射し、40発が発射された後(フェーズD)砲身は正常に戻ったとされ(零点が変わったが)新しいパネルで零点規正の後に1,500ヤードでのテストが再開された。

1,500ヤードと2,000ヤードでの結果は以下の通りだ。グルーピングの範囲は1,000ヤードとほとんど同じで、2,000ヤードでかなり大きくなる点は興味深い。この結果に対する説明は報告書では行われていない。(この報告書は本当に報告のみ行っており、理論や見解は無い。)しかし、私が考えるに砲弾が周期的な機動で飛んでいき、1,500ヤード地点でちょうど周期の谷を迎えていたのかもしれない。これはただの憶測ではあるが。

すべての距離でのテストの結果を踏まえて散布は全体7.38mil/7.58mil平均0.189mil0.205milと計算された。結果が出た後に以前行われた90mm砲と76mm砲の試験結果が引っ張りだされた。

平均分散は偏向と仰角で90mm砲だと0.115mil/0.142mil76mm砲で0.112mil/0.110milでした。

試験の内容を比較し「データの比較から17ポンド砲は90mm砲、76mm砲どちらと比較しても広く散布する」とされた。

パート1はこれで十分でしょう。このテストに関してはまたいずれかの時点で触れます。

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